こけし太郎

金曜日, 2月 28, 1986

 しばらくの間、腰が抜けたようになってしまって、動くこともできなかった太郎ですが、やがて正気にもどると、恥ずかしさがこみ上げてきました。
「自分より年下の、しかも、初めて会った若者に犯されて、触られもしないのに噴き上げてしまうなんて……。」
太郎は、まだ堅いままで、自分の尻の穴に突っ込まれてる若者のものを、体をよじるようにして引き抜くと、全身自分の樹液でべとべとになっているのもかまわず、褌を締めるのもそこそこに、部屋から飛び出して行きました。
「お、おい、待て!」
若者が呼びかけるのも無視して、最初に待たされていた部屋へ飛び込みました。
 部屋の中で待っていた男達は、生々しい精の匂いを体中に残した太郎が飛び込んできたので、びっくりしたようでしたが、何も言いませんでした。
太郎は、脱いであった着物に大急ぎで袖を通すと、みんなの好奇に満ちたまなざしを逃れるように、部屋からは走り出しました。どこをどう通ったのか、太郎は、やっとの思いで屋敷の外へ出ると、一目散に自分に家まで走って帰りました。道々出会う人に、自分の体の濃厚な精の匂いがわかるんじゃないか、さっきの若者との卑わいな交わりを見破られるんじゃないか、と心配で、顔見知りの人に会っても、顔をそむけるようにして走ったのです。でも、あんまり急いでいたので、肌身離さず持ち歩いていた、例のこけしを若者の屋敷に忘れてきたことには気がつきませんでした。
 自分の家に帰って、そうそうに雨戸を閉めてしまった薄暗い部屋の中で、太郎は、やっと落ち着いてさっきの若者との交わりを思い出していました。
「まだ幼い顔をしているというのに、あの若者はずいぶん逞しかったなあ。次郎と同じくらいだろうか。ひょっとしたら、次郎よりもでかいものをそそり勃たせていたなあ。」
そのそそり勃っていたものに自分が犯されたのだ、と思うと、太郎の褌の中は、また元気になってきてしまうのです。
「あんなにいっぱいになる感じは、こけしでも感じたことがなかった。」
そして、太郎は、褌をゆるめると、片手で堅くなってしまったものを扱き、もう一方の手は、若者に注ぎ込まれた樹液がにじみ出してぬるぬるの尻の穴へと行ってしまうのでした。
 だんだん気持ちが高ぶってきて、太郎は、例のこけしを探しました。
「あれ……?」
いつも、着物の懐か、たもとに忍ばせているのに、どこにも見当たらないのです。
「まさか……?」
太郎は、やっと、例のこけしを若者の屋敷に忘れてきたことに気づきました。
「ああ、何とかして……。」
仕方なく、太郎は、指を、ぐい、と突っ込んで、ぐりぐりこねまわして、下腹部の空白を埋めようとしました。
「うう、い、いくっ……。」
びゅっ、と飛んだものは、生々しい男の匂いをまき散らしました。
 その頃、屋敷では、若者が太郎の忘れていった例のこけしを見つけていました。
「そうか、あいつは、いつも、これで……。」
太郎がそのこけしを片手に一人遊びしている場面を思い浮かべて、若者は、そのこけし以上に逞しいものが、ぐっぐっ、と頭をもたげてくるのを感じていました。
「ようし、なんとしても、あいつを見つけ出してやるぞ。」
若者は、手がかりになるそのこけしを握り締めながら、すっかり元気になってしまった自分のものを扱きました。
「う、ううっ……。」
そして、腰を前後にゆすりながら、びゅっ、びゅっ、と部屋中に精をまき散らしたのでした。