搭乗案内 ブリーフィング

水曜日, 4月 29, 2009

 彼の身体も俺の身体も、汗や樹液でどろどろだったので、バスルームに駆け込んでシャワーを浴びることにした。熱い水しぶきを浴びながらねっとりとキスをすると、彼はちょっと恥ずかしそうに、
「どうもありがとうございました。」
と言った。二人してバスタオルで身体の水滴を拭きながらベッドのところに戻ってくると、彼は、ソファに乱暴に脱ぎ散らかされた自分の服に、ちら、と視線を投げた。
「……。」
けれども、このまま帰してしまうのはなんだかもったいない気がして、俺は、彼の視線には気がつかないふりで、バスタオルを首に掛けたままの彼を、もう一度ベッドに押し倒すことにした。
「もうちょっとだけいいだろ?」
俺がそうつぶやくと、彼は、少しだけにっこりしてうなずいたが、その笑顔がたまらなくかわいかった。そして、彼は、俺の腕枕の中で、
「でも、すごく大胆ですよね。」
探るような目つきで俺を見た。
「何が?」
俺は、彼に腕枕を供給しているのとは反対の右手で、彼の身体をさりげなく撫で回している。
「さっき、サウナで出会ったばっかりの俺を部屋に引きずり込んで、こんなことまで……。」
俺は笑いをこらえて、
「サウナの中で、『俺を犯してください』ってフェロモンが全開だったぞ。」
そう言ってやった。
「えっ、そ、そうですか?」
彼は俺の腕枕の中であわてた表情を見せたが、俺が、
「うそだよ。」
と言ってやると、ほっとした様子だった。でも、俺が続けて、
「でも、今日、矢倉っていう機長と晩飯食ってただろ?」
と言うと、かなり驚いた様子だった。
「ど、どうしてそれを?」
俺の腕の中の彼の身体が、緊張で硬くなっているのがわかる。
「すぐ、隣のテーブルで、俺も飯を食ってたんだ。」
俺は、かいつまんで成り行きを説明してやった。例の地上職のやつのことも。ただ、さっきまでここでやつの尻の穴をがんがん犯してたことは言わなかったが、どうやら察しは付いたみたいだった。
「パイロットに迫られてるんだ、って言われてたぜ。」
俺がそう冷やかすと、彼は、
「いやだなあ、俺のことをそんなふうに言いながら飯食ってたんですか?」
ちょっと苦笑した。
「でも、本当は、ちょっと違うんです。」
彼の表情は、さっき俺に押し倒されて悶えていたときとは違って、恋に恋する乙女ふうになっているのが、俺の好奇心をくすぐった。
「まあ、矢倉さんにおもちゃにされてる、っていう意味では正しいんだけど。」
と前置きしてから、
「どっちかって言うと、迫ってるのは俺なんですよね。」
と意外な発言をした。
「えっ?」
この言葉に、今度は俺のほうが緊張で身体を硬くしてしまった。
「俺、学生の頃から結構年上の人にかわいがってもらうことが多くて……。」
まあ、それはそうだろう、確かに、かわいがってみたくなるようなやつだからな。
「だから、いつも言い寄られるのを待ってるだけだったんだけど。」
俺は、彼に話を促すように優しく頭を撫でてやった。
「コパイになって、初めて矢倉さんと一緒に乗務することになって、ブリーフィングで会ったとき、俺、たぶん、一目惚れしたんですよ、矢倉さんに。」
なるほど。
「まあ、プラトニックだけじゃなくて、肉体的にも矢倉さんに惚れちゃってるから、よく矢倉さんのことを想像しながらオナニーしたんです。」
そう言うと、彼は、俺の腕枕の中で寝返りを打って俺の方を向いた。
「そんなだから、矢倉さんと一緒に乗務すると、すごく緊張して、しょっちゅう失敗するんで、怒鳴られてばっかりなんですよ。」
彼が矢倉という機長に怒鳴られているところを想像すると、ちょっとそそるものがあった。
「機長に怒鳴られて、勃起してたりするんじゃないのか?」
それで、俺が、そう冷やかすと、意外にもその通りだったらしく、彼は何も言えないまま赤面した。
「スケベなやつ……。」
俺が彼の下腹部に手を伸ばすと、機長のことを思い出したのか、さっき、あんなに派手に飛ばしたにもかかわらず堅くなっているものに触れた。俺がそれを、ぐっ、と握ると、彼は、また発情したような眼差しで俺を見ながら、
「遊びで犯すだけなら、矢倉さんにはいっぱい相手がいるから、俺なんかに手を出す気にならないんですよね、きっと。矢倉さんて、客観的に見てもいい男だから、遊ぶ相手には不自由しないと思いますよ。社内でも有名だから……。」
でも、それこそこんなに『犯してください』フェロモン全開なら、その機長が気づかないはずはないと思うが、
「機長もわかってるんだろ、君のこと。」
俺に尋ねられて、彼は、ちょっと寂しそうな表情になって、
「もちろん、気づいてるんだとは思うんですけど、コックピットに入る前に、『仕事と性欲は別だぜ。』なんて言われちゃう始末で……。たぶん、しようがないやつ、と思われてるんでしょうね。」
その情景が目に浮かぶようで、彼には悪いが、俺はちょっと苦笑してしまった。
「他のコパイには、半分冗談だとは思うんですけど、平気で言い寄ったりしてるのに、俺にはそういうことはないですもん。」
まるで放置プレイだな、と俺は再び苦笑してしまった。
「今日も、晩ご飯を食べてるときは、もうちょっと俺がこうするべきだ、みたいな話ばっかりで……。矢倉さんと別れたあとで、自分の部屋でいろいろやってたんだけど、やっぱりそれじゃ満足できなくて、気晴らしにサウナでも行ってみようと思って。まさか、こんなことになるとは思ってなかったけど。」
そういって、彼は、俺の目を見た。
「自分の部屋でやってた、いろいろってなんだ?」
俺が意地悪く尋ねると、彼は、また赤面して、さっきから俺が握っているものが、ひくん、と反応した。
「え、指とか、ディルドとか……。」
指はともかく、ディルド、って……。
「そんなエロイものを持ち歩いてるのか?」
機長が忠告したくなる気持ちもわかる気がする。
「小さいやつですよ。」
それにしても、そう言い訳する彼のかわいさは、もう一回犯してみたくなるには十分すぎた。
「それで、準備が完了してたわけか。道理ですんなりとくわえ込んだはずだ。」
俺は、握っていたものを離して、彼の股の間に手を進めた。
「……。」
彼は、ごくん、と生つばを飲み込みながら、すんなり股を広げて、俺の指先が卑わいな尻の穴に到着できるようにした。
「それとも、いつでも準備完了してるのかな?」
さっきの名残なのか、それとも、新たに熟してきたからなのか、彼の尻の穴は、すんなりと俺の指をくわえ込んで、
「ああっ……。」
ねっとりした感触で俺を誘っていた。