搭乗案内 機体点検

水曜日, 4月 29, 2009

 さすがに奴と添い寝する気はなかったが、きっと、奴もそのつもりだったらしく、しばらく俺の身体で戯れた後で、
「じゃあ、そろそろ俺は帰るっす。」
シャワーも浴びずに服を着始めた。
「遅番でも、ちゃんと寝ておかないと、業務中に居眠りしちゃいそうだから。こんなにがんがん責められたのは、久しぶりっす。」
俺は、手近にあったトランクスだけを身につけると、奴を部屋のドアのところまで送っていった。
「また、遊んでくれるっすか?」
ドアの手前で振り返ってそう言った奴の顔は、さっきまでの淫乱さとはうってかわって、まだあどけなさを宿した瞳が妙におどおどした感じで、つい、俺は奴をもう一度抱き締めてしまった。
「もちろんさ、また連絡するよ。」
俺の言葉に、奴は、ちょっと微笑(わら)って、
「待ってるっす。」
あっさりと手を振ると、俺の返事も待たずにドアから出て行った。
「おう。」
そのあまりの未練のなさに、俺はあっけにとられたまま奴を見送った。奴なりの価値観なのだろうとは思うが、逆に、どうやって奴にお引き取りいただくべきか、いろいろ考えていた俺のほうが不純な気がして、複雑な気分を抱えたまま、俺は、気晴らしにホテルのフィットネスに併設されているサウナにでも行ってみることにした。最終チェックインが近かったが、急いで部屋を出れば一汗かくことはできそうだった。
 この時間だからもう誰もいないだろうと思って乱暴に押し開けたサウナのドアの向こうに、誰かが座っているのを見て、俺は、どき、っとしてしまった。予想しなかった相客の存在というだけでなく、確かにそれは、見知っている奴だったからだ。
「失礼……。」
俺は、非礼をわびながら、さりげなく、彼の斜め位置になる場所に位置を占めて、いったいどこで見たんだろう、と記憶を探り始めた。
「ふうっ……。」
流れ出る額の汗を素手でぬぐいながら、奴が出した声を聞いて、俺は、晩飯での一場面を鮮やかに思い出していた。
『新人の副操縦士を口説いてるみたいっすよ、今日は。』
そう言われて振り返ったときに、例の『矢倉』というパイロットに口説かれていた奴に違いない。口説かれて一発やった後なんだろうか……、それとも、こいつにはその気はなくて、口説きの攻勢から逃れてきているんだろうか。俺は俄然興味がわいて、彼のことを、きっと、じろじろとなめるような目つきで観察していたに違いない。けれども、俺の視線に気づいているくせに、彼は俺の視線から顔を逸らせて、俺の視線になぶられるままになっている。少なくとも、嫌がっているわけじゃなさそうだったので、俺は、遠慮なく汗にぬめっているその身体をじっくりと見せてもらった。若くてあまり無駄のない身体は、その内側になんらかのトレーニングはしているに違いない筋肉を秘めているようだった。俺が無遠慮に見つめていると、心なしか、彼の股間を覆っているタオルの隆起が目立ってきたような感じがした。
「うん……?」
身を乗り出すようにして、俺がその部分に視線を注いだのに気づくと、はっきりとその部分は盛り上がり始めた。彼の脈に合わせるように、ぐっ、ぐっ、と盛り上がっていく。それでも、彼はその部分を手で隠そうともせず、堅く目をつむると、
「……。」
ごくっ、と生つばを飲み込むようにした。彼のタオルはその内側の状態を明らかにしていて、覆われているからこそ、むき出しの勃起よりもよけい卑わいだった。
「ほう……。」
思わず俺が、感嘆のため息を漏らすと、彼のタオルの隆起は、ひくん、と動いて、まるで俺が手を伸ばして握り締めるのを待っているかのようだった。
 俺は、無言のまま、彼の隣に移動し、自分の手のひらを彼の腿に乗せた。すると、彼の身体は、びくっ、と反応し、
「あっ……。」
欲情したうめき声が口から漏れたが、彼の身体は逃げようとはせず、むしろ、俺の手が股間に滑り込みやすいように、ほんの少し股が広げられた。
「……っ。」
俺の手がゆっくりとタオルの内側に滑り込んでいく。彼の両手は、何かを必死にこらえるように、自分の両膝をつかんでいる。
「うっ……。」
俺がその熱くそそり勃つものを握り締めると、それは、汗なのか、それとも、先走りのた粘液があふれていたせいなのか、すでにぬるぬるになっていた。俺は、そのがちがちに反り返ったものをゆっくりとしごきながら、もう一方の手で彼の手を俺のものに誘導した。タオルを激しく突き上げている俺のものをおずおずと握ると、
「すごい……。」
彼は、そうつぶやいた。
「よかったら、俺の部屋に来ないか?」
俺は、彼のうなじに流れる汗を舌でぬぐい取りながらそうささやいた。すると、彼は、堅くつむっていた目を開けると、あどけないとも言える表情で俺を見て、
「いいんですか?」
握っているものに、ぐっ、と力を込めた。
「もちろん……。」
俺は、そう言って、彼の唇に軽くkissをした。俺が握っている彼のものは、まるでそのままぶっ放してしまいそうなくらいがちがちに充血している。ここで一発やってしまいたかったが、たぶん、もうそろそろこのフィットネスも終了時間になる頃だろう。別の男とやった後の部屋に連れ込むのは気が引けたが、他に選択肢はなかった。
「じゃ、先に出てるから……。」
仕方なく、俺は、びんびんのものをタオルで押さえつけるようにしてサウナを出た。ロッカーで服を着ていると、彼が後からやってきた。そして、俺に見られていることを意識しながら、股間を押さえていたタオルをとると、彼のものは相変わらずびんびんのままだった。
「卑わいだな……。」
思わずそうつぶやきたくなるくらい、赤黒く充血した先端が、ロッカールームの明るい照明に照らされて、てかっている。ニットトランクスをはいても、突き上げているものを隠すことはできなかった。
「おや?」
突き上げられているニットトランクスの先端に濡れ汚点ができているのは、明らかに拭き残した水滴ではなく、先端から新たにあふれ出した先走りの粘液のせいに違いない。
『夜はまだまだこれからだな。』
俺は、そう思いながらフィットネスを後にした。もちろん、俺の横には、不自然にポケットに手を突っ込んで歩きにくそうにしている野郎がいた。