視線

木曜日, 8月 9, 2001

「明日は、俺の部屋でビデオの鑑賞会をやろう。」
彼に電話でそう言われた時から、僕は、もう、どきどきしていた。
『いったい、どんなふうに写ってるんだろう。』
彼は、もう、何度か見たらしくって、電話でいつも、
「健太がこんなにスケベだとは思わなかった。」
と僕のことを責めていた。
「あんなはしたないことをしながら、しかもよがってるなんて。」
とか、
「自分で出してもいいとは言ってないのに、見せつけるように派手に飛ばして、困ったやつだ。」
とか言われるたびに、受話器を持った僕は、パンツの中で窮屈になったものの位置を直さなきゃいけなかったのだ。
「もちろん、健太の反省会もかねてるんだぞ。」
彼は、ちょっと声を落として、まるで僕の耳元でささやくように言った。
「……。」
僕は、何も答えられなくて、受話器を握り締めたままだったけど、びんびんになったものから、先走りの粘液がにじみ出るのを感じていた。

テレビの画面に映し出された自分の姿は、自分が思っていたよりも、もっと卑わいに見えた。
「ほら、健太は、こんなにスケベなんだぞ。」
彼は、画面の僕の姿を見ながら、後ろから抱き締めるようにして、僕の体をもてあそんでいる。僕は、画面の僕自身が恥ずかしかったのと、恥ずかしいと思っているくせに彼にもてあそばれると、びんびんになってしまう僕自身が恥ずかしかったのとで、もう、どうしようもない状態になってしまっていた。
「もう、勘弁して……。」
だから、僕は、画面から顔をそむけて見せたんだけど、彼は僕の頭を両手で支えるようにして、
「ちゃんと見なくちゃ駄目だろ?」
口調は優しいけれども、それは、僕に対する命令だった。
「ああっ……。」
僕が、画面のほうに顔を向けると、彼は、僕のびんびんになってしまったものに手を伸ばしてくる。
「それに、いやがるふりをしても、体は正直だから……。」
確かに、彼に握られた僕のものは、言い訳のしようがないほどがちがちで、赤黒く充血した部分は、あふれ出した粘液でてらてらしていた。
「そうだろう?」
彼のてのひらがその部分をずるずると刺激して、僕は思わずのけぞってしまう。
「下半身だけじゃ満足できないのか?」
彼は、僕がのけぞったのをいいことに、僕の耳たぶを前歯で捉えて、熱い舌でぐりぐりとなめまわしてきた。
「ううっ……。」
もちろん、僕は、もう画面を見るどころじゃなくて、堅く目をつむって、その快感に翻弄されていた。彼の舌が僕の耳たぶを嬲るたびに、僕の下腹部は、びくん、と反応し、そして、そのたびに粘液があふれ出してしまったから、彼の手のひらは、ますますなめらかに僕の充血しきった部分をなで回していた。
「ああっ……。」
彼にいたぶられている僕のものからは、断末魔の快感が広がっていた。でも、彼は、それを見透かしたように、
「勝手にいっちゃ駄目だぞ。」
すっ、と僕への刺激をやめてしまうのだ。
「そ、そんな……。」
僕のものは、虚しくひくんひくんと脈打っている。
「いきたいのか?」
そして、彼は、そんなことを意地悪く僕に尋ねる。
「……。」
恥ずかしさに、僕は、自分が赤面しているのを感じる。
「何を恥ずかしがってるんだ。……ほら、自分のこのスケベなところをよく見てみろ。」
彼は、僕の首を、ぐっと持ち上げて、また僕に画面を見るように強制した。
『あ、いっちゃう、あっ……。』
そして、画面の中の僕は、いきり立ったものから大量の樹液を噴き上げるところだったのだ。
「こんなにスケベなくせに、今さら何を恥ずかしがってるんだよ。」
彼に耳元でささやかれて、僕は、自分のものから、つーっ、と粘液があふれ出すのを感じていた。

結局僕は、いかせてもらえないまま、彼の腕の中で朝を迎えた。僕の下腹部には、重い快感が粘りついているようで、ずっと勃ったままのものを彼に、ぎゅっ、と握られると、ずきん、と腰のあたりで鈍い火花が疼いた。
「そろそろ起きないと会社に間に合わないぞ。」
彼のねっとりしたkissは、僕にとって最良の媚薬だった。こんなに発情したままで、会社なんか行けるんだろうか。
「今日は、これをはいて行けよ。」
なんとかベッドから起き出した僕に、彼が手渡してくれたのは、小さめのケツ割れだった。
「こ、こんなのを……。」
僕は、自分がこんなものをはいた姿を想像しただけで全身がほてりそうになったけど、彼は、そんな僕をみてちょっと微笑って、
「スケベな健太には、ぴったりだな。」
自分は、さっさとスーツを身につけ始めた。僕は仕方なく、そのケツ割れをはいたけど、さっきからビンビンのものをその中に押し込めるのは大変だった。
「ああっ……。」
ざらざらの布が刺激になって、きっと、僕は今日一日中、勃ったままに違いない。
「ケツ割れの中にもらすんじゃないぞ。」
彼は、僕のあごに手をかけながら、わざわざそんなことを言って、ちょっとkissした。もちろん、ケツ割れの中のものはそのkissに反応して、ズキン、となってしまったけど、彼はそれを無視して、
「健太も早くスーツを着ないと、捨てていくぞ。」
意味ありげに微笑って見せるだけだった。

「今日は早く帰って来いよ。」
という彼の声が耳元に残っていたけど、そんなことを言われなくても、こんな状態でちゃんと仕事することなんかできるはずがなかった。ちょっと時間が経てば、ケツ割れの感覚にもすぐなれちゃうんだけど、何気なく体を動かした時に、トランクスやビキニとは違う感覚があって、
『今日は、僕、あんなにエッチなのをはいてるんだ。』
と思い知らされるのだ。すると、また、ケツ割れの中身が元気になっちゃったりして、本当に、今日の僕は、ほとんど一日中勃ったままだった。
「すみません、今日はちょっとお先に……。」
だから、できるだけ早く仕事を切り上げて、僕は、彼の部屋へと急いで帰っていった。もちろん、その間も、改めてケツ割れの着用を認識させてくれる駅の階段や、意味もなく勃っちゃってるのを悟られないようにしなきゃいけない満員の電車や、僕を発情させるためとしか思えない障害物をクリアして帰らなきゃいけなかったので、彼の部屋に帰りついた時には、多分、僕のはいているケツ割れは、粘液で濡れてしまっていたに違いない。
「お帰り。」
ちょっと驚いたことに、彼は、僕よりも早く帰ってきていて、僕を玄関で迎えてくれた。
「……?」
そして、彼は、
「どうだった?」
と僕の耳元でささやきながら、当然のようにスーツのズボンの前に手を押し当ててきた。
「あっ……。」
彼は、僕がぎんぎんに勃っているので、満足そうにニヤニヤしていたけど、僕は、そのことで改めて自分のスケベさを思い知らされたみたいで、全身がほてるような感じだった。
「スケベなやつ……。」
わざわざ彼はそう言いながら、僕の耳たぶを軽くかんだ。

てっきりこのまま押し倒されちゃうんだろうという僕の期待はあっさり裏切られて、彼の寝室には、また、例のビデオカメラが三脚に据え付けられていた。
「完全に発情してる目つきだぞ。」
彼は、ベッドの前で立ちつくす僕にカメラを向けながらそんなことを言う。
「やりたくてしょうがない、って顔に書いてあるぞ。」
確かに、一日中、エッチな気分だったので、本当にそんな目つきなのかもしれない。
「けど、健太は、こっちのほうが好きだもんな。」
彼は、ビデオカメラのレンズを、ちら、とながめながらそんなひどいことを言う。
「そ、そんなこと……。」
僕は、なんとか言わなくちゃ、と思うけど、例のビデオのことを考えると、それ以上言葉が続かなくなってしまう。
「これから、俺は、晩飯の買い物に行ってくるからな。」
僕は、思わず、生つばを飲み込んだ。
「そんなにうれしいのか?」
彼は、意地悪い笑いを浮かべて、ビデオカメラで録画を始めた。
「俺が、興奮するようなエッチな格好をビデオに見せつけるんだぞ。」
彼は、相変わらず突っ張ったままの僕のスーツのズボンの前を握りながらそう言った。
「ビデオを見て、思わず抜きたくなるようなスケベな健太が映ってれば、一発抜いてやるからな。できるだけスケベにやるんだぞ。……まあ、そんなこと言わなくても、健太なら十分、俺が思ってる以上にスケベなことをやるだろうけどな。」
そして、彼は、まだ、スーツを着たままの僕をビデオカメラの前に残したまま、出かけていった。

「彼が興奮するような、僕のエッチな格好って、いったい、どんな格好だろう……。」
とりあえず、僕は上着を脱いで、ベッドの上に放り投げた。
「ああ、こんなに勃っちゃって……。」
ズボンの上からでも、僕がびんびんになっちゃってることがわかるくらいで、僕は、盛り上がった部分をゆっくりと手のひらで撫でてみた。
「ううん……。」
ビデオカメラに撮られてるんだから、悶えたりしちゃ駄目だ、って思うのに、ついつい、声が出てしまって、僕は、きつく目をつむって、ケツ割れの中のびんびんのものから湧き出してくる快感に耐えなくちゃならなかった。
「こ、こんなこと……。」
そして、自分には、こんなスケベなことできないはずなのに、僕は、操られるようにズボンのジッパーをおろしていた。
「や、やだ、こんなの恥ずかしい……。」
そんなことを言えば、少しは自分のスケベさを誤魔化せるような気がして、でも、僕の指は、ガチガチになってしまったものをケツ割れの脇から、ズボンの外に引きずり出そうとしていた。
「見ちゃ駄目だよ……。」
さすがにビデオカメラのほうは向けなくて顔をそむけたまま、でも、僕は、自由になって反り返っているものの根元をつかんで、ビデオカメラに見せつけるようにした。
「こんなにスケベだったんだ、健太は。」
きっと、あとでビデオを見ながら、彼は、こんなことを言って僕をいじめるに違いない。それがわかっているのに、ぼくのびんびんのものの先端からは、つーっ、と透明な粘液があふれ出して、糸を引きながら床に落ちた。

もう、僕は、自分でも自分のエッチな行動がとめられなくなっていた。エッチなことをしている自分に興奮して、もっとエッチなことをしてしまうのだ。
「ズボンも脱がなきゃだめ……?」
ズボンを脱いだ僕は、上半身はワイシャツにネクタイをしたまま、下半身は、ケツ割れから、反り返ったものをびんびんに突き出した状態だった。
「こ、こんな格好するなんて……。」
そのまま僕は、ベッドに両手をついて、ビデオカメラのほうに、大きくケツを突き出した。
「きっと、僕の恥ずかしい部分が、ビデオカメラには全部映っちゃってるに違いない。」
そう思うと、僕は、自分のびんびんのものをひくん、とけいれんさせてしまった。もちろん、それと同時に、ビデオカメラに写っている部分は、きゅっ、と収縮するところが記録されてしまってるんだろうけど。
「もう駄目……。」
ビデオカメラに見つめられているケツが熱く感じられて、僕は、またビデオカメラのほうに向き直ると、ベッドにもたれるようにした。
「やだ……。」
僕の指は、ワイシャツのボタンをすっかり全開にしてしまう。でも、ネクタイはしたままで、それが僕のスケベさを示しているようだった。
「うっ……。」
そして、僕の指は、僕自身の乳首をいじっている。
「こんなので感じるなんて……。」
自分の指でいじっているだけなのに、どうしてこんなに感じちゃうんだろう。

もっとエッチなことってなんだろう。もっとスケベな僕の格好って。僕は、ネクタイをゆるめると、それが下腹部を越えてたれ下がるようにした。
「ああっ……。」
それから、僕は、ベッドにもたれて、ケツ割れの脇から突き出しているものの根元を、そのネクタイで縛るようにしながら、もうすっかりぬるぬるになってしまっている先端を、手のひらでぐりぐりとこねまわしていた。
「す、すごく気持ちいい……。」
僕が気持ちいいのは、ネクタイで縛ったりしてるからなんだろうか。ぬるぬるの先端を手のひらでこねまわしてるからなんだろうか。それとも、ビデオカメラに見つめられているからなんだろうか。
「も、もう我慢できない……。」
自分のやっていることに、僕は、もっと興奮してしまって、両手で、ガチガチになっているものの全体をしごき始めていた。
「あ、もう、駄目……。」
すぐに、もう、僕は引き返せない快感の嵐に投げ込まれていた。ぐちゅぐちゅとスケベな音をさせながら、びんびんのものをしごいている僕を、ビデオカメラが冷静に記録している。それなのに、僕は、ビデオカメラに見せつけるように、体をねじりながらしごき続けている。
「い、いきそう……。」
そして、腰を、ぐっ、と突き出すと、ビデオカメラめがけて、青臭い樹液を、びしゅっ、びしゅっ、と派手にぶちまけてしまったのだ。
「健太のスケベさにはあきれるよな。」
ビデオを見る彼は、きっとそう言うに違いない。やっぱり、僕って、スケベだったんだ。

(Wに……)