朝の電車は、みんなちゃんと自分の体を自分で支えようとしてるが、最終電車の乗客は、半分くらいは、自分の体を自分で支えようとしていない人がいるのではないかと思う。だから、混み具合は朝の方がひどいかもしれないけれども、身体を蹂躙されるという意味では、最終電車のほうが始末が悪いかもしれない。そんな電車にこんな状態で乗ろうとしているなんて……。ちゃんとカバンでガードしていないと、自分のまわりのほろ酔い加減の人達に、俺がスーツのズボンをくっきりと勃ったものの形に浮き立たせていることを気づかれてしまう。俺は、そのことだけを気にしていたので、電車の中に、ぎゅうっ、と押し込まれるまで、自分の背後に誰かがぴったりと張り付くようにしていることに気がつかなかった。電車が動き始めると同時に、その人の右手は、俺のケツを撫でるようにしながら、ゆっくりと、俺のスーツのズボンのポケットを目指し始めた。それに気がついて、俺は、カバンで押さえつけたものだけではなくて、緊張で全身をこわばらせてしまった。
「……。」
俺の緊張に気づいたらしく、その人は、左手も俺の腰骨のあたりに移動させてきた。そして、右手を俺のスーツのズボンのポケットに侵入させながら、左手で、俺の腰を引きつけるようにして、自分の下腹部を俺のケツに押しつけてきた。
『堅い……。』
俺のケツには、あきらかに堅く形を持ったものが、ぐいぐいと押しつけられている。
「あっ……。」
そして、俺のズボンのポケットに侵入してくるその人の右手の感触が、生々しくおれの太腿に伝わってくる。俺は、ダミーのカバンで自分の下腹部をガードするのに精一杯で、その人の手の動きをどうすることもできなかった。きっとそれがわかっているので、その人の手は、ゆっくりと、俺の身体の反応を楽しむかのように、俺の身体の奥に向かって進んでいく。そして、すぐに、その人の手は、俺のケツの穴からつながる紐の先のスイッチに触れて、
「言いつけ通りだな……。」
まるで、俺を軽蔑するかのような苦笑を俺の耳元に吹きかけた。多分そうだとは思っていたが、その言葉を聞いて、ちょっと安心したからか、俺は、また、自分のものが、ひくん、とけいれんするのを感じていた。
「っ……。」
耳元に感じる息で、俺の身体は敏感に反応してしまう。きっと、俺のスーツのズボンの中でぎんぎんになっているものは、これから起こることへの期待感で、ゴムの中でべとべとになってしまっているに違いない。俺は、ロータのスイッチが入れられた時のことを想像して身構えていたが、俺の期待はあっさり裏切られて、その人の手は、ポケットのもっと奥を目指して動き始めた。
「え……。」
ゆっくりと、俺のスーツのズボンのポケットの中の穴をくぐり抜けると、ゴムをかぶってびんびんになっている俺のものを探り当てて、それを、ぎゅうっ、と握り締めた。そしてそのまま先端の部分を握るようにしてズリズリと動かすと、ゴムとの間にたまった粘液が潤滑剤になって、俺のものには思ってもいなかったような強烈な刺激が走った。
「うっ……。」
俺は、うつむいて、その刺激に耐えたが、俺のその反応を楽しむかのように、その人は、俺のぎんぎんになっているものの先端への刺激を繰り返した。そのあまりに強烈な刺激に、俺は、何とかその人の手をカバンを持った自分の手で押さえようとしたが、ズボンの上からではどうしようもなかった。その人は俺の努力をあざ笑うかのように、
「ふふっ……。」
ゆっくりと手をポケットの中に戻して、今度は、例のスイッチを入れた。途端に、俺の身体の奥から、突然、激しいうねりが押し寄せてきた。
「あっ……。」
こらえきれずに、俺は、声を上げてしまったが、ちょうど、カーブにさしかかって電車がゆれたので、まわりの人はそのせいだと思ってくれただろうか。けれども、酔っぱらいの人以外は、それらしい人ばっかりだから、さっきから普通じゃない俺の状態を見て俺がいったいどういう状況にあるのか、少なくとも、俺の斜め前にいる中年のリーマンの好色な目つきは正しく言い当てていた。それに、俺は、声を上げてしまっただけではなく、ケツにくわえ込んでいるロータが振動を始めた瞬間に、自分の身体が、びくん、とけいれんしてしまうのをどうしようもなかった。その人は、俺のその反応を見逃すはずはなく、
「いいんだろ?」
その人の声は、俺の耳元で、あざ笑うかのように低く響いた。そうささやかれても、俺は、その言葉に応える余裕すらなく、足ががくがくして、立っていられなくなりそうだった。それを察したのか、その人は、もう一方の手で俺の腰を抱くようにして俺の身体を支えた。もちろん、俺のケツには、その人の堅くなったものが押しつけられたままだったが、俺が、思わず、ケツを締めてその快感を何とかしようとするのにあわせるように、その人のものも、ひくん、ひくん、と脈動しているようだった。
「もっとよくしてやるよ。」
スイッチを入れたままで、その人は、またポケットの奥まで手を突っ込んでくると、さっきと同じように、ゴムの中ですっかりぬるぬるになっている俺のものを、ずりずりと刺激し始めた。
「あ、っ……。」
身体の奥と外の両方からの強烈な刺激にさらされて、このままでは、すぐに俺は絶頂へと追い込まれてしまいそうだった。何とかして、俺は、両手に持ったカバンでその人の手の動きを押さえ込もうとしていると、その俺の手に、別の何か、熱くて堅いものが押し当てられてた。
「ん?」
それは、さっきから俺を好色に見つめていた中年のリーマンの股間で息づいているものだった。
「すげ……。」
その人は、カバンを押さえている俺の手をつかむと、自分のものを握らせようとした。その勢いに押されて、俺は、自分の手の甲に押しつけられてるそのぎんぎんに堅くなっているものを握ってしまった。
「ほうっ……。」
その中年のリーマンは大きくため息をつくと、俺が握っているものを、びくっ、とけいれんさせて、快感への満足を表明した。そして、その間も、俺の身体には、強烈な刺激が続いていて、下腹部を中心にこみ上げてくるものすごい快感に、俺が抵抗しきれなくなるのはもうすぐそこだった。
「……に到着します。」
車内アナウンスが俺の降りるべき駅に電車が到着することを告げるのと、
「あ、ああっ……。」
俺が、快感に抵抗しきれなくなるのとは、ほとんど同時だった。電車がブレーキをかけて完全に止まるまでの間、俺は、その人の手に握られたまま、ゴムの中におびただしい量の樹液を噴き上げ続けていたのだ。
通勤電車 金曜日の最終電車
金曜日, 5月 30, 2003