「返してやってもいいよ。」
高橋先輩が真面目な顔でそういうので、僕はてっきりこのまま無罪放免になるんだと喜んでいたのだけれど、
「その代わり……。」
と言う先輩の声に、自分が甘かったことを悟った。
「俺の言うとおりにするんだぞ。」
先輩の、にやっ、と笑った顔は、でも、すごく卑わいで、正直、僕は自分の下腹部が、ずきん、となるのをどうしようもなかった。けれども、もちろん、そんなことを先輩に知られたらもっとひどいことになるから、僕はしょげきった表情を装ったままで、
「そんな……。」
とりあえず、泣き落としに出ることにした。でも、高橋先輩は僕のうそ泣きなんかにつき合うつもりは毛頭ないらしくって、
「俺の言うとおりにしないのなら、明日、おまえが西岡にしてやってたことをみんなに公表するぞ。」
どうやら僕には選択の余地はなさそうだった。高橋先輩はベッドに腰を降ろしていて、僕僕があきらめて、
「先輩の言うとおりにします。」
そう告げると、
「素直でいいじゃないか……。」
と言った。仕方なく僕はジャージを脱いでいったけど、その間ずっと、先輩は僕の動作を見ていて、僕は本当に恥ずかしかったのだけれども、どういうわけか、体のほうはもっと恥ずかしい状態になってしまった。
「全部脱げ。」
最後に脱いだトランクスが普通の状態じゃないものに引っかかったりなんかして困ってしまったけど、結局、僕は裸になった。
もちろん、僕は、その普通の状態じゃないものを両手で押さえて隠してたけど、そんなのは無駄な努力だとはわかっていた。けど、まずいと思えば思うほど、僕のものはぎんぎんになって、ひょっとしたら、両手の間から充血した頭くらいは先輩に見えちゃってるかもしれない。
「両手を頭の上で組むんだ。」
先輩の言葉は有無を言わさない調子で、僕は、目をつむって両手を頭の上に載せた。
「なかなか元気でいいじゃないか。」
すると、フラッシュの光る気配があって、僕が驚いて目を開けると、先輩がデジカメで僕の裸を撮影していたのだ。
「カメラは勘弁してください。」
一応は抗議してみたけど、先輩は気にするふうもなく、たぶん、僕のいきり立った部分をアップにしてもう一枚撮影した。
「ほら、返してやるよ。」
先輩は、そんな僕に、べとべとになっている競パンを投げて寄越した。
「せっかく返してやったんだから、ここではいてみな。」
こんなべとべとのをはくなんて……。
「えー?」
でも、先輩の顔を見て、しょうがなく僕はその青臭い匂いを放っている自分の競パンをはき始めた。もともと窮屈な上に濡れてるから、すごくはきにくくて、しかも、こんなになっちゃってるものをどうやって競パンの中に押し込んだらいいんだろう。
「はみ出してるぞ。」
先輩は、競パンの上から僕の充血したものがはみ出してる構図が、いたくお気に入りみたいで、何枚も画像を取っていた。
「次は、ひざまで競パンをずらすんだ。」
もう、僕は、先輩の言いなりで、後から考えてみれば、かなりいっちゃってる画像を撮りまくられたのだ。
そんなふうにしていろいろやってると、もっとまずいことに、練習が終わってからずっとトイレに行ってなかったので、かなり深刻な尿意を催してきたのだ。
「せ、先輩……。トイレに行っていいですか。」
もちろん、できるだけ我慢したんだけど、もうどうしようもなくなってきて、僕は先輩にそう言った。
「おお、いいぞ。」
そう言った先輩のうれしそうな顔が、だいたいどういうことを意味するのかわからないわけじゃなかったけど、さすがにこのままじゃ漏らしてしまいそうだったので、とりあえず僕はトイレに駆け込んだ。
「待てよ。」
結局、僕は、バスタブの中で、小便をさせられることになってしまった。
「ほら、こっちを向いて……。」
当然のように先輩はカメラを構えてて、
「勘弁してくださいよ、先輩……。」
でも、しょうがないので、僕は、小便をし始めた。どういう状況にしろ、危機的な状態だった膀胱がゆっくりとしぼんでいくのを、僕は、ホッ、とした気持ちで感じていた。ところが、そんな僕にカメラを向けたままで、先輩が、
「栗坂、このカメラは動画も撮れるんだぜ、知ってたか?」
そんなことを言った。確かに赤いLEDが光ったままで、
「ま、マジですか?」
僕は、なんとか小便を止めようとしたけれども、この状態じゃどうしようもなくて、
「俺の部屋の風呂で小便するなんて困ったやつだなあ。」
そんな先輩の台詞とともに、僕の恥ずかしい姿はデジカメに記録されていった。
高橋先輩のこと 3
木曜日, 1月 31, 2002