昔々、あるところに、庄助という若者がいたそうです。庄助は、村はずれの一軒家に一人で暮らしておりました。家の前の小さな畑で野菜を作り、鶏を数羽と、いつのまにか住みついた犬に太郎と名前を付けて飼い、細々とそれでも幸せに暮らしておったそうです。
「そろそろ日が昇るかな。」
にわとりの声に目を覚ました庄助が、がたぴし音をたてて雨戸を開けてみますと、お日様がちょうど山から顔を出したところでした。
「ワオン。」
裏の方から駆けてきた太郎が庄助の前にちょこんと座り、見上げるようにして一声吠えました。
「今日もいい天気だなあ、太郎。」
庄助が太郎に話しかけながら寝間着を脱ぎますと、その下は六尺褌だけの若々しい裸でした。
「クウン。」
太郎にとって、その庄助の裸はまぶしすぎたようで、太郎はあわてて頭をそらしましたが、庄助は気にするでもなく元気よく盛り上がった褌もはずしてしまいました。そうすると、褌から勢いよく弾んで飛び出したものがあります。
「元気だなあ。」
庄助は他人事のようにそう言うと、手でそれを腹に押さえつけて、洗ってあった別の褌を締め込んでいきました。
そうして着物を着てしまうと、庄助は太郎を連れて近くの小川へ顔を洗いに出かけました。歩いている足元にじゃれつく太郎を何度も庄助は叱りましたが、そのときは首をすくめてみせてもすぐまた太郎は庄助の足にじゃれつくのでした。元気なまま褌を締めた庄助でしたが、いつも顔を洗っている所に着く頃には褌の中味も平静にもどり、小便をしたくなったので褌の脇からそれを引き出して小川に向かって用を足しました。それからしゃがみ込むと、上流から流れてきたきれいな水で顔を洗いました。その間、太郎は庄助の斜め前にちょこんと座っていましたが、そこからは庄助の股の奥の褌のふくらみが見えておりました。
「こら、太郎……。」
庄助は太郎が自分のひざの間へもぐり込んできたので、びっくりしてしまいました。チロチロとなめる太郎の舌の感触が、先端の敏感なところに直接こそばゆく感じられるのは、どうやらさっき用を足したときにちゃんと褌の中に収まっていなかったらしいのです。思いもかけなかった刺激を受けて、庄助は自分がぐんぐん褌の脇から外へ伸び上がっていくのをどうしようもありません。
「太、太郎……。」
太郎は、堅くなってきたそれを、骨でもしゃぶるようになめていました。
太郎のざらざらした舌は、庄助にとって初めて経験する感触でした。まだ初々しい色をした、何も保護するもののない先っぽの所を太郎がなめるたびに、庄助の腰のあたりから背筋に向けて、ずん、と得体の知れない感覚が走るのです。
「太郎、なめるのはやめろったら……。」
とうとう庄助はこらえきれなくなって、小川の所に尻を着いてしまいました。布団の中でどうしても寝静まろうとしないものを自分でまさぐってみる時とは、比べものにならないほどの快感なのです。
「あ、あ、あ……。」
庄助は太郎の舌の動きに酔いしれているうちに、とうとう快感の限界を越えてしまい、体の後ろに突いた手を支えにして腰をぐっと突き出すと、小川に向かって、びゅっ、びゅっ、と飛ばしてしまいました。とろっとした白いゼリーが勢いよく飛んで小川の中にいくつか落ち、かたまりのまま流れていきました。
庄助の体のけいれんがおさまってくるにつれて、ゼリーの飛ぶ距離も短くなり、地面にも少し落ちましたが、大部分は、太郎の鼻の頭と庄助自身の太腿や真白の褌を汚してしまうことになりました。
「ごめん、ごめん、太郎。こんなに汚してしまって……。」
庄助はまだときおり思い出したようにびくついているのをあわてて褌に押し込むと、太郎の鼻頭を小川の水で洗ってやりました。
「クウン。」
洗い終わった鼻頭を庄助が撫でてやっても、太郎は、さっきのことは何も知らないような顔なので、庄助は少しホッとして家へ帰ることにしました。べっとり濡れてしまった褌が気になりましたが、家へ帰るまで我慢することにして、家を目指して小川に沿って下って行きました。
庄助がそのまま歩いていきますと、小川のほとりに一体のお地蔵さまが、ポツンと立っておられました。
「お地蔵さま、お早うございます。」
庄助が手を合わせておじぎをしますと、お地蔵さまはなんとなくニヤッと笑われたようでした。
「何かおかしいことでもありますか?」
庄助がきょとんとして言いますと、お地蔵さまはおかしそうな顔をされました。そして、
「庄助、庄助。」
と庄助に呼びかけられて、
「先ほどはうまかったよ。」
とニヤニヤ笑いながら、そうおっしゃるのです。
「はあ?」
庄助には何のことやらさっぱりわかりません。
「何やら黄色い水が流れてきたので少しすすってみたら、庄助の小便の味がした。」
お地蔵さまはニヤニヤしたまま歌うようにおっしゃいました。
「飲まれたのですか?」
庄助はびっくりしてしまいました。
「そう、そう。」
お地蔵さまは、少し真顔になってうなずかれると、今度は一層ニヤニヤして、
「何やら白いものが流れてきたのですすってみたら、そこと同じ匂いがした。」
と、お地蔵さまは、庄助の着物の帯の下あたりを指さされました。その下は、庄助の濡れたままの褌なのです。
「そ、それも飲まれたのですか?」
さっきの快感を思い出して、庄助は真っ赤になってしまいました。
「太郎になめてもらったのだろう。」
お地蔵さまは、まるで、庄助が太郎にやってもらっているところをごらんになっていたかのようでした。
「ごらんになっていたのですか?」
庄助は恥ずかしげに尋ねましたが、お地蔵さまはニヤニヤするばかりで答えてはくれませんでした。