庄助はその日、夜になって床についても、なかなか寝付かれませんでした。今朝のことを考えると褌の中のものが勝手にむくむくと起き上がってくるので、ついついそこへ手が行ってしまうのです。なんとかして眠ろうとしましたが、熱を帯びたものを褌の上から押さえるとそこが余計堅くなってしまうといった悪循環の繰り返しで、かえってちょっと声を上げて悶える始末でした。
「太郎……。」
とうとう我慢できなくなって、庄助は土間に寝ている犬の太郎を低い声で呼びました。
「クウン。」
かまどの前でうずくまっていた太郎は、庄助の声に頭を持ち上げ、不思議そうな目付きをして庄助の方を見ました。
「おいで、太郎。」
布団の上に起き上がった庄助が手招きしますと、太郎は大きなあくびを一つしてからのっそりと起き上がり、座敷に跳び上がってきました。
庄助は布団の上にあぐらをかいていましたが、太郎の精悍な顔を闇の中に見ただけで、もう褌の中が窮屈になってきてしまうのです。
「おいで、太郎……。」
庄助は布団の横に行儀よく座った太郎の首を抱いて自分の方に引き寄せました。
「クウン。」
太郎にも庄助の気持ちが分かったのか、その長い舌で庄助の上気したほおをなめてくれるのでした。一方の手で太郎の頭を撫でながら、もう一方の手を自分の背中に回して庄助は褌を解き始めました。そして庄助は、絡んでいた布が外れてピクピク弾んでいるところへ太郎の頭を持っていきました。
「クウン。」
太郎は塩辛い蜜がべっとりついた雄しべをなめてちょっと鼻を鳴らしました。庄助も、相手が犬とはいえ恥ずかしかったのですが、ざらざらした太郎の舌になめられながらちょっと声を上げてしまいました。
すると、その時、土間の戸をとんとんとたたく音がしました。
「こんな夜更けに、いったい誰だろう……。」
庄助はあわてて寝間着の袖に手を通すと、布団の上に褌を脱ぎ散らかしてあるのも忘れて土間へ降りていきました。
「どなたですか?」
もともと庄助のところには、尋ねてくる人も滅多になかったのです。
「旅の者ですが、道に迷ってしまいました。どうか軒下でも結構ですから、一晩泊めてください。」
庄助は根が優しいものでしたから、大急ぎで戸を開けてその旅人を迎え入れました。
「どうもありがとうございます。」
あいさつをする旅人を見て庄助は息をのむ思いでした。というのは、あまり他人と会うことのない庄助でしたが、その庄助でもびっくりするぐらい、旅人は魅力的だったのです。
早速庄助は湯を沸かそうとしましたが、旅人がただ寝るだけでいいというものでしたから、自分の隣に旅人の床をとってやりました。
「太郎、すまないな。」
土間に太郎を追いやりながら、庄助は寝間着の中で褌に包まれることもなくぶらぶらしているものが起き上がってきそうな気配を感じて、あわてて他のことを考えて気を紛らせなければなりませんでした。庄助が旅人に自分の寝間着を出してやると、旅人は辞退していましたが、やがて、
「それではありがたく……。」
と、むこうを向いてそれに着替え始めました。どうするのかとじっと見ている庄助のことを全然意識していないようで、旅人はさっさと裸になると、褌までとってしまって寝間着を着ました。背中や尻の逞しい筋肉がもりもりと動いていて、庄助はそれから目が離せませんでした。
そのうちに着替えてしまった旅人が庄助の方を向いたので、庄助は目のやり場に困ってしまい、
「いつも褌を脱いで寝られるのですか?」
と、しどろもどろで自分でも思いがけないことを言ってしまいました。そうすると、旅人はちょっとほほえんで、
「あなたも脱いで寝られるようですから……。」
と、庄助の布団の上に散らかっている褌に目をやりました。
「こ、これは……。」
太郎と遊んでいたためとも言えず、庄助は赤くなった顔を伏せて黙り込んでしまいました。そして、さっきの太郎の舌の感触を思い出したために、正座した両足の間から持ち上がってくるものをどうしようもできず、庄助は両手で寝間着の布を押さえてなんとか目立たないようにしようとしましたが、せっかくの努力も限界のようでした。
「元気ですねえ。」
旅人の手がすっと伸びてきたかと思うと、せっかく押さえていた寝間着がまくり上げられてしまい、庄助の元気さは、正座した足の付け根からぴんと突き出してしまいました。
庄助が何も言えずに赤面していると、
「犬よりは上手ですよ。」
と、手のかわりに今度は旅人の頭がそこへおおいかぶさってきました。
「あ、そんな……。」
庄助は驚いて逃げようとしましたが、反対に旅人に体を押し倒されてしまいました。犬の舌よりはなめらかなものにすっぽりと根本まで暖かく包まれて、庄助はもう何がなんだかわからなくなっていきました。
「あ、あ……。」
ただなめるだけでなく、強い力で吸われたり、上下に動かれたりしては、もうどうしようもありません。
「や、やめてください。出てしまいそう……。」
そう言ったときにはもう手遅れで、庄助はその見も知らぬ旅人の口に含まれたまま快感におぼれていったのです。
旅人が口を離しても、庄助はまだ隆々としているものを突き出したまま大きく肩で息をついて快感の名残に酔っていました。すると、旅人は、
「これだけではわざわざ私のいる意味がありませんよね。」
とつぶやくと、動く気力もない庄助の両足を抱え込み、寝間着の前をはだけて庄助におおいかぶさってきました。
「う、うっ……。」
石の如く堅いものがじわじわと体の中へ侵入してくるのはわかるのですが、快感の名残のためか不思議と痛みはありません。それどころか、やっと柔らかくなりつつあったものが再び堅さを取り戻してきていました。すっぽりと押し込んでしまうと旅人の体はゆっくり動き始めました。旅人の体の動きにつれて栓になっているものがずるずると出ていったり入ってきたりするのですが、それはいつのまにか、庄助にとってもどかしいような快感に変わっていたのです。そして、自分の腹と堅い筋肉をした旅人の腹との間にはさまれているものもその動きにつれてゴリゴリともまれていましたから、やがて庄助は耐え難い快感に気が遠くなってしまいました。