庄助がはっと目を覚ますと、雨戸のすき間からは日が射し込んでいて、どうやらもう朝のようでした。
「寝過ごしたかな。」
あわてて雨戸を開けてみるともう日はすっかり高くなっていて、まぶしさに庄助は目を細めました。
「もう朝ですよ。」
と振り返って旅人に声をかけた庄助はびっくりしました。
「あれ?」
庄助の隣に寝ていたはずの旅人は影も形もないのです。それどころか敷いてあったはずの布団も寝間着も、ちゃんと押入に収まっていて使って様子さえありません。
「おかしいなあ、夢だったのだろうか。」
けれども、庄助の下腹部はぬるぬるしているし、褌を締めようとしたときに股の間でべとついていたものは庄助自身の出したものではないようです。
いったいどうしたんだろう、といぶかりながら、庄助はいつものように太郎を連れて小川へ顔を洗いに出かけました。あぜ道を抜けて例のお地蔵さまのところへ来ると、お地蔵さまがいつになくニヤニヤしながら庄助を呼び止められました。
「庄助、庄助。」
なんだろうと思って庄助が立ち止まりますと、
「ゆうべは楽しかったなあ。」
とおっしゃいます。
「ゆうべの旅人は、お地蔵さまだったのですか?」
そう言えば、太郎のことも知っていたし、庄助の体に侵入してきたものが石のように堅かったのもそれでうなずける、と庄助は納得しました。お地蔵さまは、石でできているのですから。それから庄助は、自分の派手な悶え方を思い出して赤面してしまいました。庄助が赤くなったのを見て、
「今日も、太郎と遊ぶのか?」
と、お地蔵さまはおかしそうに付け加えておっしゃいました。庄助は返事のしようがなくて、逃げるようにして小川の上流へ顔を洗いに行きました。
その版、庄助はお地蔵さまにあんなふうに言われたものですから我慢しようとしたのですが、とうとう、
「太郎……。」
と、土間に向かって声をかけてしまいました。今晩は、太郎の方も庄助が声をかけるのを待っていたようで、すぐ庄助の布団の横にやってきました。
「クウン。」
太郎のざらざらした舌でのどのあたりをなめられれると、庄助はもう自分を押さえられなくなってしまいました。
「太郎……。」
庄助は太郎の頭を次々と自分の体の敏感な部分に押しつけていきました。そうすると太郎も、庄助が思わず声を上げてしまうほど上手になめてくれるのです。ですから、太郎の舌が塩辛い蜜でべっとりとなった雄しべに行き着く頃には、庄助は我を忘れて悶えていました。そして、そこをざらざらと太郎の舌で二、三回もなめ上げられると、ぶよっとした白いゼリーが体の奥から噴き上げてくるのを庄助はどうしようもありませんでした。
庄助は、そのあとで太郎に見守られて後始末をしながら、なんとなく物足りないような気がしていました。
「あんなに気持ちよかったのに……。」
自分でやるときよりも手を動かさなくてもいいだけ快感に集中できるし、夢の中でのようにあいまいでもないし、もっと早く太郎のことに気がつけば良かったのに、と思うぐらいでしたが、それでも何か物足りないのです。べとべとしたものを拭き取って褌を締めていた庄助は、尻に食い込むねじった布の感触に物足りないのは自分が出しただけだったからだと気づきました。きのう旅人に身をやつしたお地蔵さまに体の中へ侵入されて注ぎ込まれたのがそれほど強烈な快感だったのです。
「太郎にやってくれというのも無理だしなあ……。」
庄助は太郎の頭を抱きながらそうつぶやきました。
「クウン。」
太郎は慰めるように庄助のほおをなめてくれます。
「太郎が人間だったらなあ……。」
庄助は尻に食い込む褌の感じを楽しみながらそう思うのでした。
あくる日、庄助が例のお地蔵さまのところを通りかかりますと、お地蔵さまが、
「庄助、庄助、太郎を気に入ったようだな。」
とおっしゃいます。
「ええ。」
正直に庄助が答えますと、お地蔵さまは、
「太郎が人間だったらもっと良いと思わないか?」
庄助の心を見すかしたようなことをおっしゃるのです。庄助が大喜びで、
「そんなことができるのですか?」
と尋ねますと、
「できることはできる。」
何やらお地蔵さまは思わせぶりです。
庄助が勢い込んで、
「どうすればいいのか、是非教えてください。」
と言いますと、
「満月の晩にここへ来ておまえの精を体に塗ってやれば太郎は人間になる。ただし、全身にくまなく塗ってやらなければならないし、しかも出したばかりのものでなければならないから、しばらくは太郎と遊ぶのもやめておかんとそれだけの量は出せんだろう。もちろんその時には五、六回はやることになるだろうな。」
お地蔵さまはそうおっしゃいました。
これまでは一人暮らしもさほど苦痛に思ったことのない庄助でしたが、お地蔵さまとの一夜からあとは、精神的にも特に肉体的にもつくづく一人がいやになっていました。ですから、太郎が人間になれると聞いて大喜びで、その方法には少し不安があったものの、もう有頂天でした。
「あと五日もすれば満月だから、きっとやってみます。それで太郎は本当に人間になれるんですね。」
お地蔵さまは庄助の喜びようにニコニコされながら、
「うん、うん。」
とうなずいておられました。