太郎君が、悪魔に連れられてずんずん歩いていくと、人がいっぱい集まっているところにやってきました。
「あの人達は?」
太郎君の質問に、
「あの棒を持っている奴らは鬼だぜ。」
と、悪魔は教えてくれました。
「でも、角がないけど……。」
スポーツ刈りにして、サポータをはいた鬼やら、角刈りにして褌をつけた鬼、はては、レザーのビキニをはいて覆面をした鬼までいますが、どの鬼の頭にも角がありません。
「最近は角なんて流行らねえから、みんなやめてるんだ。」
殿にもすばらしい肉体で、太郎君は、うっとりと見とれていました。もちろん、筋肉隆々の鬼だけではなく、しなやかでスリムな鬼から、堅太りでがっしりした鬼まで、選り取りなのです。もちろん、実際に手に取ってみるわけにはいきませんでしたが。
鬼は、手にした棒で素っ裸の男達を針の山に追いやっていました。そして、言うことを聞かない男は、その棒で尻をつつくようにしているのです。でも、よく見ると、その棒の先端は、さっき太郎君が尻に入れられたものとそっくりの形です。鬼達は、その棒を、逃げまどう男達の尻の穴に突っ込んでいるのでした。
「あ、いやらしいなあ……。」
太郎君は、思わず赤面して、顔をそむけてしまいましたが、
「おまえだって、あれと同じいやらしいことをされたところじゃないか。」
と悪魔に言われてしまって、恥ずかしくてたまりませんでした。男達の尻の穴に突っ込んだ棒を、鬼は、必ず、二、三回前後にぐいぐい動かしてから、ずぼっ、と抜きます。どうやら、みんな、その卑猥棒に突かれたいために、わざとぐずぐずしているような感じです。ですから、鬼に棒で尻の穴を突かれている間は、痛がっているというよりも、気持ちよさのあまり悶えているように見えました。鬼が棒を抜いてしまったときの、不満そうな顔からすれば、やっぱり棒で突かれるのは気持ちいいことなのでしょう。
悪魔の太い棒を経験した太郎君には、その男達の不満そうな表情の理由がよくわかりました。でも、鬼達が口々に、
「続きは針の山だ。さあ、登れ、登れ。」
と叫んでいるのは、どういうことでしょう。
「『続きは針の山』ってどういうこと?」
太郎君が尋ねると、悪魔は苦り切って答えました。
「よく見てみな。かなり前から、もう、針の山には針なんか生えてないのさ。」
そう言われて太郎君がよくよく目をこらしてみると、針の山には針のかわりに、赤黒くて逞しい形のきのこがびっしりと生えていたのです。
「あ、あんなにたくさん……、アレが……。」
さすがにそんないやらしい呼び方はできなくて、太郎君は口ごもってしまいました。
「まったく地獄の恥さらしだよ。針の山は地獄のシンボルなんだから、これだけは、って言ったのに……。」
悪魔があまり気に入っていないようなので、太郎君は、針の山地獄を経験してみたいと言い出しかねていました。
鬼に針の山へ追い上げられた人達は、自分の好きな太さ、長さ、形のきのこを選んで、ゆっくりとそのうえしゃがんでいきます。
「うう……ん。」
やがてあちこちからうめき声があがり、きのこをめり込ませてしゃがんだまま自分の乳首をいじって悶える人がいるかと思うと、激しく腰を上下して、より強い刺激を求める人もいました。
「あ……ん、ああ……ん。」
針の山ならぬきのこの山からは、悶える声が響いてきます。
「すごいなあ……。」
太郎君は、この集団ワイセツ行為に圧倒されてしまいました。けれども悪魔のほうは、しきりに、
「あんなのより、昔の、針を踏みつけて痛がる奴らのほうがよかったぜ。」
と、ぶつぶつ言っています。きのこの山では、そんな二人に関係なく、
「あー、出、出るう。」
という声と共に、あっちでもこっちでも、いきり勃った生身のきのこから、ぐぐっ、ぐぐっ、と白いものが飛び散り、きのこの山は栗の花の匂いに包まれてしまいました。
太郎君は、ぼかんと口を開けて、この光景をながめていました。
「おい、よだれが出てるぞ。」
悪魔にそう言われて、太郎君はあわてて口元を手の甲で拭いましたが、何もついていません。どうやら、悪魔にからかわれたようです。
「ひどいなあ、……よだれなんか出ていないじゃないか。」
太郎君がそう言っても、悪魔は、にやにやしているばかりです。
「でも、これじゃあ地獄って、なんだか気持ちのいいところみたいだなあ。」
太郎君がそう言うと、悪魔は真顔にもどって、
「そんなことはないぜ。痛いことをやってるところだってあるさ。……じゃあ、ちょっと寄り道して、そこへ行ってみるか。」
と言いました。そして、どうやら悪魔は、ひわいきのこの生えている針の山のふもとへ歩いて行くようです。