僕だって、ポタージュ・スープを自分の体の上にまき散らすなんていうのは考えてしまうから、できるだけ我慢したんだけれども、さっきのオードブルの興奮もあって、結局のところ桜井の思い通りになってしまったのだ。
「頼む、やめてくれよ。」
僕が下腹部にぐっと力を入れて何とかしようと努力しているのに、桜井は知らん顔で手を上下に動かすのだ。今いったら、全部を桜井に見られてしまう、と思ったら、よけい興奮してしまって、僕は、
「う……ん。」
と、最後の努力をしたんだけれども、とうとう生臭いポタージュ・スープを、ぐっぐっと体の上にいっぱいまき散らしてしまった。
「派手に飛んだなあ。」
桜井は感心したように言うと、
「直接なんてちょっと下品だけど、せっかくだから……。」
なんて、僕の胸の上の飛沫や、へそにどろっと溜まったのなんかを直接口で吸った。そうしたら、桜井の唇が体に触れるたびに、僕は息を止めなきゃならないようなことになってしまって、どうやらそのたびに、スープの残りがだらだらと少し流れ出たみたいだった。
桜井が、なめ残した分や、下腹部の体毛にこびりついた分なんかをティッシュペーパーで拭いてくれている間、僕はぐったりなっていた。
「さあ、いよいよメインディッシュだぞ。」
ひょっとしたらこれで解放されるんじゃないか、なんて僕は甘い考えを抱いていたのだけど、桜井はさすがに桜井だったみたいだ。
「もう許してくれよ……。」
「何言ってるんだ、まだデザートだって残ってるんだぞ。……今日はフルコースだって言ったじゃないか。」
桜井はそんなことを言いながら、フォークを取って僕の乳首を突っついたり、脇の下をくすぐったりしていたけど、恐ろしいことには、そんなふうにされて僕の『肉料理』は、どうやら元気を取りもどしつつあるらしいのだ。
「元気だなあ……。」
桜井が喜んで、ナイフとフォークでまだ半分柔らかいところをもてあそぶものだから、僕のは本当にまた堅くなってしまっていた。
僕が堅くしてしまったのを見て桜井は、にやにやしながら戸棚から何かの缶詰めを取り出してきた。
「どう見たってこいつは魚料理っていう感じにはなりそうもないけど、まあフルコースだし、そこは我慢することにして……。」
缶切りでその缶を開けると、桜井はスプーンでその乳白色のドロッとしたものを僕の堅くなっているものに塗りつけた。
「栗坂は知らないだろうけど、この会社のホワイト・ソースは結構うまいんだ、缶詰めの割りには……。」
僕のはすっかりホワイトソースで被われてしまった。
「帆立貝のコキール、なァんて、俺ってわりと想像力あるなあ……。」
わざと『勃ってる』って意味の『立』っていうところを強調して言ったりするから、僕は相当恥ずかしかったんだけど、当の『帆立貝』のほうはそんなことには関わりなく、ホワイト・ソースをまぶされたまま、僕の体から元気に勃ち上がっていた。
「いい加減にしてくれよ。」
本当のことを言うと、僕は結構興奮したりなんかしている自分がちょっと恐ろしかったのだ。
桜井は、ナイフとフォークを使ってその『帆立貝』をつまむと、
「ちょっと味見を……。」
なんて、舌をペロッと出して、先のところを……。
「あ、こら……。」
こういうことをされると、またおかしなことになってしまいそうで困ってしまう。
「うん、なかなかだなあ……。本当は、チーズでも散らせてオーブンにぶち込めばいいんだけど、どうする、栗坂?」
僕が体をよじって抵抗しようとしていたものだから、桜井はそんなことを言って僕を脅迫するのだ。それで僕が仕方なく大人しくなると、桜井は『帆立貝』を握って上下に動かし始めた。ホワイト・ソースが、ぐちょぐちょと変な音を立てて、何よりも桜井の手がホワイト・ソースのおかげでぬるぬると動くもんだから、僕は危うく声を上げてしまうところだった。
「我慢すると体に悪いぞ。」
そんな僕を見て、悔しいことに桜井はそう言って嘲笑うのだ。
そうやって僕を手でいじったり、舌でなめたりしているうちに、やっと僕のについていたホワイト・ソースはなくなった。
「魚の次は肉料理だなあ、栗坂。」
桜井は落ち着き払って、水を飲みながら僕に言ったけど、恥ずかしいことに、これから何をされるのか期待して、僕のはいよいよ堅くなってたりするのだ。
「どうするかなあ……。」
なんて、桜井はちょっと考えていたけど、すぐに何か思いついたふうで、冷蔵庫からベーコンを取り出してきた。
「そ、それをどうするつもりなんだよ。」
だいたい察しはついていたんだけど、桜井の口からはっきり言われたかったりして、僕も本当は淫乱なのかもしれないなあ。
「こいつに巻き付けて……。」
桜井はそう言いながら、冷蔵庫から出したばっかりで冷たいベーコンを、いつまでたっても元気なままでいるものに、ペトペトと根元から先のほうまですき間なく巻き付けていった。
「それで、俺が食う。……そうだな、ヒレ肉のベーコン巻きロースト、ってのも変だな、焼いてないんだから。……焼いてやろうか、栗坂。」
桜井は、また何かとんでもないことを思いついたらしくて、クスクス笑って机のところへ行った。
ライターなんかどうするんだよ!
「……。」
僕は恐怖で声も出なかったりしたんだけど、
「こんがりローストしてやるよ。」
なんて桜井が本当にライターの火でそこをあぶったのには驚いてしまった。もちろん、ちょっとの間だったし、だらんとたれ下がっていた余分のベーコンの脂が溶けて、ジジッ、と音がしただけで、僕のそこは全然熱くなかったけど……。
「だいじょうぶだよ、そんなに引きつった顔しなくても……。」
桜井はおかしそうに言ったけれども、僕にしてみれば笑って済まされることじゃないのだ。それで、僕はちょっとふくれていたんだけど、桜井がそのベーコン巻きの『肉料理』を口に含んだりしたものだから、あわててふくれっ面をしかめっ面にしなければならなかった。よだれが流れそうになるのか、桜井は、チューチューと大きな音を立ててそれを吸った。
「うまいのか?」
ベーコンを隔ててるから、そんなに感じるわけじゃないんだけど、自分のを吸われてるってのはやっぱり気になるから、僕は首をちょっと起こして、自分の腹の向こうに顔を寄せている桜井に尋ねてみた。
「そうだな……、ベーコンの味がする。」
もうちょっとまともなことをいうのかと思ったけど、桜井は当たり前のことを真面目な顔で言った。