結局、桜井は、せっかく巻いたベーコンを、僕に多少痛い思いをさせながら、歯でかみちぎって食べてしまった。
「なかなか良かったな。」
そして、桜井は満足げに、僕の乳首をフォークで突っついて遊んでいたけど、
「そうだ、サラダを忘れていた。」
なんて、思い出さなくてもいいことを思い出したのだ。サラダなんて言うから、今度は芯をくりぬいたレタスにでも差し込まれるのかと思ってたら、桜井はまた包丁を持ってきた。
「野菜はなんて言ったって、取ったすぐのものがいいからなあ……。」
「おい、野菜って、まさか……。」
桜井は、早くも、さっきからさんざんおもちゃにしている僕のものの周りに生えてる『野菜』をつまんで包丁で刈り取ろうとしていた。
「こら、暴れるなよ。うまく切れないじゃないか。」
桜井が包丁を動かすたびに、ぶつぶつと何本かまとめて刈り取られていくのがはっきり感じられた。
「それはひどいよ……。」
桜井は僕の『野菜』を用意してあった皿の上にふわっと置いた。
 手がロープで縛られていたから抵抗できなくて、というよりも、抵抗しようとすればできたんだけど、手が縛られていることを名目にして僕があんまり抵抗しなかったもんだから、そこらへんはすっかり桜井に刈り取られてしまった。
「これじゃあ不ぞろいだから、いっそのことカミソリでそってやろうか?」
クスクス笑いながら桜井は言ったけど、
「そこまではやめてくれよ。」
いくらまばらな感じになってしまったとしたって、ないよりはましじゃないかと思うのだ。
「ドレッシングで食うのか?」
僕は何となく惜しいような気持ちで、桜井の持っている皿の上に乗った新鮮な僕の『野菜』を見た。
「まさか、いくら俺だって、そこまではやらないさ。サランラップでもして、今日の記念に取っておくよ。」
そして、時々気が向いたら桜井は、これを見て僕のフルコースの悶え方を思い出すんだろうな、なんて思ったら、僕は思わず赤面してしまった。桜井は、刈り取ったあとの僕の下腹部を撫でて、
「これでちゃんとブリーフをはいたら、どんな感じがするかなあ。」
なんて、またクスクス笑った。
「きっとチクチクするなあ。……そしたら、講義中に勃っちゃったりして……。」
桜井が気づいたかどうかは知らないけど、この桜井の言葉は現実のものになってしまって、その後しばらくの間、僕はズボンの前を気にしなきゃならない羽目になってしまったのだ。
「サラダも終わったことだし、デザートにいくか。」
よくこれだけいろんなものが出てくると感心したりなんかしていたんだけど、
「残念ながら、もうフルーツはないから、こいつは省略して……ケーキかな。」
と言いながら、桜井は僕の胸の上にコーヒーフレッシュの小さいカップをいくつか投げた。
「本当は生クリームが欲しいんだけどなあ。」
僕にとっては生クリームもコーヒーフレッシュも、どうせ体にベトベト塗られるんだから、大した変わりはないのだ。
 まだしばらく桜井は残念がっていたけど、やっとあきらめたふうで、
「栗坂をデコレーションしたら、うまそうになるだろうな。」
なんて冗談めかして言いながら、コーヒーフレッシュを僕の体の上にたらたらと垂らし始めた。冷たい液体が僕の体にしたたるたびに、僕はそこらへんの筋肉に力を入れて我慢したけど、桜井は、そんな僕の様子を楽しんで、やたらとたくさん僕の体にかけて、そこら中ネトネトにしてしまった。
「このままじゃあ、うまくないな。」
それで、桜井は、僕の体の上にグラニュー糖までばらまいたのだ。
「うまそう……。」
まず桜井の舌の犠牲になったのは、僕の乳首だった。左側をなめられているうちに、いっしょに右側の乳首も堅くなってしまって、それが桜井の気に入ったらしくて、僕の胸はコーヒーフレッシュのかわりに、今度は桜井の唾液でベトベトになってしまった。
 桜井はマナーがなっちゃいないから、僕の体をなめるだけじゃなくて、歯をたてたり、かみついて吸ったり、不本意にも僕はそのたびに声を上げなくちゃならなくて、要するに、気持ちが良かったんだけど……。
「こういうケーキはなんていうんだろうな。」
名前なんかどうでもいいから、そういう変なとこをなめないで欲しい。くすぐったくて僕が身をよじっているのに、桜井は何を勘違いしているのか、ますますしつこく僕の体に舌をはわせるのだ。それとも、これって、本当は快感なのかなあ。へそなんかを舌でぐりぐりやられると、その感覚が腰のあたりまで響いていくもんだから、
「う……う。」
なんて、僕はさっきまでかろうじて我慢していた声を出してしまった。そんなふうだから、桜井の口が、コーヒーフレッシュとは別の透明な液をにじませているものにやっとたどり着いた時には、僕は自分から腰を浮かせたりなんかして……。
 さんざんなめられたり、手でこすられたり、はてはナイフとフォークでもてあそばれたりしてたものだから、桜井の口に含まれてしばらくもたたないうちに、僕はもう我慢できなくなってしまった。
「あ……。」
それなのに、僕がぐっと腰を持ち上げた瞬間、桜井は、ぱっ、と口を離してしまった。僕は、急に刺激がなくなったものだから、しばらくの間、快感の途中に放り出されることになった。もうどうにもならないもどかしさに僕が下腹部に力を入れている時に、桜井の指が、裏側の敏感な部分を、ちょん、と突っついた。
「う……。」
二回目だというのに、『ポタージュ』の時と同じぐらい激しく、僕は自分の体の上に搾り立ての生クリームを、ビュッ、ビュッ、と飛ばしてしまった。
「ふう……。」
桜井がニヤニヤ笑って見てるのはわかってたけど、僕はぐったりなってしまって、体の上に青臭いクリームを飛ばしたまま、しばらくは動く気にもなれなかった。
 僕がぐったりなっている間に、桜井はインスタントコーヒーをぬるま湯で溶いて、コップに入れてきた。
「食後のコーヒーを楽しまなくちゃな、このデミタスで……。」
そりゃ、確かにデミタスかもしれないけど、そこにはさっきのコーヒーフレッシュだけじゃなくて、僕が今出したばっかりのフレッシュクリームだって溜まってるのに……。
「汚いぞ……。」
「これがいいんじゃないか……。」
桜井はコーヒーを少しずつ僕のへそに溜めては、ちゅうちゅうと吸っていたのだ。
「うまいのか?」
さすがに今はくすぐったさのほうが先にたって、興奮するどころじゃなかったけど……。
「うん、わりと複雑な味だな。」
あたりまえだろ。へたをすれば、僕のへそのごまだって混じってるだろうし……。桜井は、僕の体をティッシュペーパーで拭いてくれると、ようやく僕を自由の身にしてくれた。
「ひどい目にあっちゃったなあ……。」
僕がベッドに起き上がってそう言うと、
「そんな言い方をするわりには、結構楽しんでたみたいじゃないか。」
そりゃあ全然気持ち良くなかったわけじゃないけど、疲れたし、体はねっとりとして気持ち悪いし、第一、毛をこんなに刈り取られちゃって……。
「のどが渇いたよ。僕にもコーヒーか何か飲ませてくれよ。」
そうしたら、桜井はいきなりズボンをブリーフといっしょに脱ぐと、下腹部に息づくものを突出させて、無理矢理僕の口に押し込んだのだ。口の中に収まりきらないほどのその堅いものに、僕が目を白黒させていると、桜井は、
「疲れているときにコーヒーは胃に悪いからな。俺のミルクを飲ませてやるよ。」
なんて言って、僕の口の中でピストン運動を始めたのだ。
 水たまりのせいで、とんだ『注文の多い料理店』に料理されてしまったな、なんて苦笑しながらも僕は、桜井のものに塩辛い粘液があふれているのを味わって、桜井流に言えばこれは『コンソメスープ』っていうことになるのかな、なんて脳天気なことを考えていたのだ。