部屋を出ようとした時に、俺のシャツの胸ポケットに入れた携帯が振動して、メールの到着を告げる。
『今朝も最後尾の車両に乗って股間はガードするな。誰に触られても抵抗するな。ちゃんと見張ってるんだから、言うとおりにしないとどうなるかわかってるだろうな。』
いつの間にか見慣れてしまったアドレスのメールに、俺は、ちょっとため息をつくふりをしながら、でも、スーツのズボンの中のビキニに押し込んだ自分のものが、むくむくと活動を始めるのを感じていた。
「メールの言うとおりにしなきゃしょうがないから……。」
だから、俺は、駅に着くと、最後尾の車両の列に並んだ。この時間帯だと、どの車両も満員には違いないけど、この車両は乗換駅で階段に近くなるのでより混雑する。そんな車両に股間のガードなしで乗るなんて……。
「お下がりください。」
電車が到着して、俺は、まわりの人垣に押し込まれるようにして電車の中に乗り込んだ。身動きすらできないような、こんな状態なのに、俺は、両手を胸の前で組んで、メールの指示通りにノーガードの股間を満員電車の中に晒していた。こんなことをすればどんな結果になるか、いつのまにか俺はそれを身体に刷り込まれてしまっていた。電車の中で身体に触れられたりするのは嫌だったはずなのに、俺のものは、自分の意志に関わりなく、すでにビキニの中でびんびんになっている。いつから俺の身体は、こんなふうに淫乱になってしまったんだろう。
「ふう……。」
まわりの人垣に身体がなじんで電車が動き出すと、なんとか息をできるくらいの余裕はあった。けれども、その余裕を味わうより前に、俺の斜め前にいる、課長と同じ年齢くらいに見えるサラリーマンの手が、さりげなく俺の腿の付け根にタッチしてきた。俺は、そのさりげない感覚にさえ感じてしまって、口をぎゅっと閉じて、身体が反応しないようにするので精一杯だった。その人の手は電車のゆれに乗じて、だんだんと俺の下腹部に移動してきた。
『ああ、勃ってるのがばれてしまう……。』
俺のズボンの前に、すでに、斜め上に向かった堅い山脈ができているのに気づくと、その人は、そっぽを向いたまま、にや、と笑った。
『スケベなやつだと思われたんだろうな……。』
その瞬間、俺は、たまらなく恥ずかしいはずなのに、その山脈の頂点から、じわっ、とあふれ出した先走りが、堅くなったものを押さえ込んでいるビキニの布地を濡らすのを感じて、思わず、下腹部に力を入れてしまった。もちろん、俺の、びんびんになったものは、その人の手に、ひくん、と興奮した俺のメッセージを伝えて、それを合図に、その人は、それまで手の甲で触れていたのを反転して、痛いくらいに勃起してしまっている俺のものを掌に納めた。その人は、根本から先端まで俺のものの堅さを確かめるようにしごき、その刺激に、俺は、もう、我慢できなくなっていた。
『早く、ナマで触って欲しい……。』
そして、とうとう、俺は、相手の手に押しつけるように自分の腰を突き出すようにしていた。その人は、もう一度、にや、と笑うと、俺のズボンのジッパーを探り当てて、ゆっくりとそれを降ろしていく。その、じじっ、っという細かな振動が、ビキニの布を通して俺のものを刺激するので、俺は、もうそれだけで、立っていられなくなりそうだった。そして、全開にされてしまったところから、ゆっくりとその人の手が侵入してきて、俺のものをビキニの布地の上から、ゆっくりと指先でなぞっていった。
「ううっ……。」
俺は、何とか声を出さないように我慢したけど、顔が快感にゆがんでしまうのはどうしようもなかった。その人は、先端のところを探るように指先でこすって、俺のビキニがすっかり濡れてしまっていることを確かめているようだった。そして、その人の指先に一番敏感な部分を刺激されながら、俺は、自分のものが、ますますぬるぬるの先走りを漏らすのを感じていた。俺が唇をかんで快感に耐えているのを確認すると、その人は、無理矢理、俺のビキニの股ぐりの部分からそのごつい手で侵入して、俺のものをナマで握り締めたのだ。
『自分以外の手に、こんな状態になったものを、しかも満員電車の中で握られているなんて、こんな恥ずかしいことが、こんなに気持ちがいいなんて……。』
その人の手は、ゆっくりと俺のものをしごき始めて、思わず、俺は、その人のほうに寄りかかるようにして身体を預けてしまった。すると、その人は、俺のうなじに、ふっ、と息を吹きかけるようにして、その意外な攻撃に俺の身体が、びくん、と反応してしまうと、さっきからしごいていた俺のものを、ぎゅっ、と握り締めた。そうして、俺が、その人の息の攻撃に身体をけいれんさせてしまうたびに、俺のびんびんのものはその人に握り締められたのだ。その、もどかしいような刺激の連続で、俺はじぶんの下腹部が熔けてしまいそうな感覚だった。
「まもなく……に到着です。」
俺は、車掌のアナウンスに、はっ、と現実に引き戻されて、あわててその人から身体をよじるようにして少し離れた。そして、電車がブレーキをかける時の人垣の動揺を利用して、開いたままになっていたズボンのジッパーを何とか元に戻した。けれども、もちろん、俺のビキニを突き上げているものは、堅くなったままだった。人垣に押されるようにしてホームに降り立った後も、まだ、自分の顔が上気しているのがわかる。満員電車の中で、こんなに濃密なことをされてしまうなんて、数年前の自分には思いもよらないことだったのに。それなのに、さっきの人の指の感覚を思い出すだけで、やっとおさまりかけたものが、また、力を持ち始めるのがわかる。すると、その時、シャツの胸ポケットの携帯が振動してメールの到着を告げる。
『いつもより派手によがってたじゃないか。やっぱりおまえはどスケベだな。』
例のアドレスからのメッセージが、また、俺の下腹部を最大限の状態に駆り立てる。
『明日も、この車両でみんなに嬲ってもらうんだぞ。』
俺は、思わず、生唾を飲み込んでしまう。俺は、とうとうたまらなくなって、手近のトイレに駆け込むと、大急ぎでズボンをずらした。そして、さっきまでのもどかしい快感の区切りをつけるために、トイレの壁に向かって、先走りでぬるぬるになってしまっているものを扱きあげていた。