転勤の情報を知るのは、本人が一番最後、という法則通りに俺の転勤は少なくとも俺自身にとっては予期しないものだった。もちろん、俺が予期していなくても、会社にとってみれば、通常の異動の一環だったに違いない。転勤先は行ったことのないところだったが、俺は、特に深く考えることなく転勤命令に従うことにした。まだ独身寮にいる俺にとっては、引っ越しの手間もさほどのことはなく、会社に出入りしている運送会社の運転手が、わざわざ手伝いにきてくれて、むしろ楽に引っ越しができたくらいだった。仕事の引継などで、ほとんど部屋のかたづけができていなかったので、その運転手が俺の部屋まで来てくれたときも、まだ、荷造りは終わっていなかった。
「まだ終わってないんですか?」
彼は、しょうがないな、というふうに首を振りながらも、
「すみません、仕事の引継で、あんまり片付ける暇がなくて……。」
俺の言い訳に機嫌よくうなずいて、
「いいすよ、よくあることですから。」
俺の荷物を段ボール箱に詰めるのをどんどん手伝ってくれた。
ところが、彼が押入の中から、いろんなものを無造作につかんで段ボール箱に詰めているうちに、わりときわどいビキニブリーフや、ケツ割れサポータが出てきて、俺は、知らんふりをしながらも、思わず赤面してしまった。俺のケツ割れサポータの一枚を手にした時に、一瞬、彼は、そいつを手にとって、まじまじと見つめているようだった。もちろん、彼は次から次へと俺の下着を段ボール箱に放り込んでいったが、心なしか、作業ズボンの前が膨らんでいるようで、俺は、そっちのほうが気になって仕方がなかった。よく見れば、彼のぶりぶりした作業ズボンのケツは、ブリーフの線が浮き出していて、ひょっとしたら、彼もビキニかケツ割れサポータをはいているのかもしれない。
「本当に、助かりました。」
彼の運転するトラックの助手席に乗って、俺は転勤先の寮まで移動することになっていた。彼は、額に光る汗をタオルで拭きながら、ハンドルを握っている。
「サポータとかあったけど、何かスポーツをやってるんすか?」
俺は、彼にそう言われて、
「え、ああ、ジョギングとか……。」
彼の横顔を見つめてしまったが、横から見た彼の首筋の力強さが印象的だった。
「そうっすか、俺は、ウェイトをちょっとやってるんすけどね……。」
俺は、彼の逞しい首筋、そして、卑猥に盛り上がっているように見える彼の作業ズボンの股間へと、なめるように視線を移動した。
「だから、荷物なんか、軽々なんですね。」
確かに、彼の腕は、魅力的に筋肉質で太かった。
「いや、これは仕事っすから……。」
彼は、ちょっと照れたように短髪の頭をかいて見せたが、それを見ながら俺は、日焼けしたうなじに流れる汗の塩辛さを思って、生唾を飲み込んでいた。そんな他愛ない話をしているうちに、車は俺の転勤先の寮に到着して、彼は、せっせと段ボール箱を俺の新しい部屋に運び込むと、
「じゃあ、俺はこれで……。」
と、かぶっていた帽子を取って俺に頭を下げた。
「どうも、お世話になりました。」
俺も、彼に頭を下げたが、確かにその時、俺の視線と彼の視線は、ねっとりと絡み合って、それだけで俺は、はいていたジーンズの中身がむくむく大きくなり始めてしまった。
「じゃ、またよろしくお願いします……。」
彼の作業ズボンも、はっきりと盛り上がっているように見えたが、彼はそのまま形のいいケツを俺に向けると、車に乗り込んで、ぶるるるっ、とエンジンをかけて走り去ってしまった。俺は、彼の尻を見送ってから、部屋にもどって荷物の整理を始めた。段ボール箱をどんどん開けて、中身を収納場所に放り込んでいるうちに、彼が箱詰めをしてくれたビキニブリーフやケツ割れサポータの箱の順番になった。そのうちの一枚に、明らかに俺の体液の汚点ができていて、俺は、さっき彼が見つめていたケツ割れサポータがこれだったことを確認した。きっと以前にオナニーをしたときに、こいつをはいたままいった名残に違いない。俺は、そんなサポータがあったことをすっかり忘れていたが、今更ながら、恥ずかしくなって、ジーンズで押さえつけているビキニブリーフの中のものが、ぐんぐん勃ち上がってくるのを押さえられなかった。
「これを見られたのか……。」
俺は、我慢できなくなって、ジーンズをビキニブリーフといっしょにひざまで降ろすと、びんびんに飛び出してきたものをしごき始めた。
「あ、ああっ……。」
俺の興奮はどんどん高まっていって、すぐに引き返せないところまでいってしまった。まだ引っ越しのかたづけも終わっていないので、ティッシュペーパもどこにあるのかわからない。俺は、その汚点付きのサポータをつかむと、先走りでぬるぬるになってしまっているものを包んで、
「い、いくっ……。」
びゅっ、びゅっ、とその中に噴き上げてしまった。
「う……。」
まだ慣れない寮の部屋の中でする初めてのオナニーは、転勤先での俺の生活を暗示するような快感だった。