僕は、ベッドに横たわっている彼を、床に座って壁にもたれたままじっと見ていた。彼はちらと僕のほうを見たが何も言わず、その紺色のボクサーショーツを両手でずり下ろしていった。ゴムのところにひっかかって下へ押し曲げられていたものがゴムからはずれると、大きく弾んでとび出した。それは柔らかな毛の生えた彼の下腹に当たって、ぴたんと小さく音をたてた。完全に裸になってしまうと、彼は外気に伸び上がっているそれに両手を添えて、ゆっくりと動かしはじめた。彼の喉仏がごくりと動いて、彼は、今度は両側から手ではさむような形にすると、両手を交互に動かしてはさんだものをもみほぐした。彼の両手の中でそれは左右にひねるようにもまれ、じっと見ている僕には、彼の手の動きにつれていろいろな方向からの姿が見えて、何となくユーモラスな感じがした。彼の表情まではよく見えなかったが、彼の体の緊張の仕方からみると、彼自身もそのいたずらの快感を十分に楽しんでいるようだった。
そんないたずらを繰り返して、先のところにぬめりが充分にいきわたるようになると、彼はそれを利用してそこを包むようにした掌をゆっくりと回転させた、何も保護するもののないその部分は、そんな愛撫でさえうめき声を上げるほどの刺激になるようだった。
「……う……ん。」
彼は両手をいろいろ使ってそこに刺激を加えていった。僕は壁にもたれて、突っ張ってしまったボクサーショーツのその部分を持て余しながら、彼の動作に見入っていた。彼は体をよじったりかすかにため息をついたりしながら、下腹部で息づくものへの刺激を続けていた。そして、彼は手を持ちかえると両手でそれを包むようにしたまま激しく上下に動かし始めた。僕はゆっくりと生つばを飲み込んで、彼の手の動きにつれて手の間から見え隠れしている赤黒い部分を見つめていた。やがて彼は体を緊張させて顔をのけぞらせると、両手の動きをいっそう速めた。
「あ……。」
彼がかすかにうめくのと同時に、彼の手の中から胸のあたりに向けて滴が飛んだ。
僕は無表情を装ってじっとそれを見ていたが、彼は恥ずかしがる様子も見せず、快感の波が体から引いていくとやがてむっくりと起き上がって、淡々と自分の胸や腹の上に飛んだ滴の始末をした。
「やあ……。」
すっかりその滴を拭き取ってしまうと、彼はそこで初めて気がついたように、僕に声をかけた。そんなことを尋ねてはいけないような気がしたが、僕はどうしてもこらえきれなくて、
「気持ちよかった?」
とつい口にしてしまった。
「いつもより、もっと……かな。」
彼の見せた恥ずかしそうな表情に、僕は自分の言ったことに気づいて思わず赤面してしまった。
夢精
水曜日, 12月 1, 1982