シャワーを浴びて帰ってきた彼は、いくぶん不機嫌そうな表情はしていたものの、もうすっかり機嫌も直ったようだった。僕はそんな彼をベッドに押し倒すとその上におおいかぶさった。ほのかに石けんの匂いのするさらっとした彼の体を僕の汗ばんだ体で押しつぶすのは楽しかった。ついさっきまで柔らかくなっていたのに、彼のその部分は僕のものにつられるように堅さを取りもどしていた。僕は自分の腹のあたりで堅くなって邪魔になっているそれの方向を手荒く変えて、自分のものを彼の太腿の間に割り込ませた。
風呂上がりのせいか、それとも僕自身が濡れていたせいなのか、割合スムーズに彼の筋肉のすき間に押し込むことができた。ちょっと態勢をたて直してから、僕はゆっくりと腰を動かし始めた。彼の筋肉にはさまれたそれは、いくぶんきしむような感じはしたものの、やがてはそれも快感に変わっていくようだった。
ふっと意識を失ってしまいそうになる感覚を楽しんでいた僕は、体をゆさぶられてはっと気がついた。きょとんとしている僕を彼がのぞき込んでいた。
「どうした、何か夢でも見たのか?」
僕がまだぼんやりしている、
「ずいぶんうなされているみたいだったけど……。」
と付け加えて言った。
「何でもないんだ。」
僕はそう言ってから、部屋の隅のロッキングチェアがまだベランダに出たままになっていることに気づいた。彼がベッドまで運んでくれたのだろうか、と僕は思いながら体の上にかかっている毛布を引き寄せた。いつのまにかまたエアコンの音がかすかにしていた。彼はベッドに起き上がってあいかわらず何だかの本を読んでいたので、僕はそっと彼の腕に触れてみたが、それはまぎれもなく本物の腕だった。
「どうした?」
今度はちゃんとあいまいに笑ってごまかしながら、僕はこれからどんな夢を見ればいいのかわからなくて、途方に暮れてしまっていた。
夢精
水曜日, 12月 1, 1982