だから、結局、小林とは、それ以上のことにはならず、かといって、僕のかなり決定的なオナニーの現場を見たにもかかわらず、小林は相変わらずの、
「先輩、ちょっとこれ教えてください。」
なんて、なんだかわけのわからないことを尋ねにきて、僕の邪魔をしていくのだ。つまり、僕と小林の間は、この一件に関して、まるで何もなかったかのような付き合いだった。もちろん、それは、表面的にということで、それ以来、僕は、誰かの裸ではなく、小林の裸を想像してオナニーをすることが多くなっていた。こんなに近くにいるのに手出しができないとなると、欲求不満が募っていって、ついに、僕は、アルコールの力を借りる決心をした。小林は酒となると本当に他愛ないから、多少汚いやり方だとは思うけど、小林を酒に酔わせてその寝込みを襲おうというつもりだった。でも、これは僕の勝手な考えかもしれないけど、小林だって、僕と酒を飲んで酔っぱらっちゃえば襲われる可能性があることはわかってるだろうし、だから、僕の部屋に飲みに来るっていうことは、つまり、襲ってください、っていうことだよな。
「ほら、もっと飲めよ。」
たぶん、こんなやつには、本当は、エタノールとかを飲ませとけばいいんじゃないかと思う。
「ええ……うふっ。」
小林は、にこにこしながら酒を飲んでいた。
「先輩も、もっと飲んでくださいよ。」
僕は、なんといっても下心があるから、あんまり飲まないようにしていたのだけど、小林は酔ってくると、やたらと相手に飲ませたがって、しかも飲まないと怒るものだから、僕もついつい飲んでしまって、けっこう酔いがまわり始めたようだった。ひょっとしたら、
「小林、かわいいな。」
なんていうぐらいのことは言っちゃったかもしれない。結局、僕も小林も、いつのまにかベッドの倒れ込んで、部屋の灯りもつけたまま寝込んでしまったらしかった。
はっと気がついたら、部屋の灯りがあかあかとついていて、僕の隣では、小林がすうすう寝息をたてていた。小林を起こさないように気を付けて部屋の灯りを消すと、それでも、月明かりだか街灯だかのカーテン越しの光があって、部屋の中は真っ暗にはならなかっ
た。
「小林……。」
このへんからはかなり憶えているんだけど、恐ろしいことにまだ充分酔っていたから、僕はベッドで毛布にくるまって眠っている小林の上に倒れ込んだのだ。
「こら、起きろ!」
なんて無理矢理起こすと、まだ半分眠ったままの小林にキスをした。
「うっ……。」
小林は何か言おうとしたみたいだったけど、僕が酔いに任せて抱き締めていたのですぐに大人しくなった。後から冷静に考えてみると、あれが小林のファーストキスっていうわけじゃないみたいだった。からんでくる舌も、おずおずと、なんていう感じじゃなくて、僕の知っている限り一番おいしいキスだった。もっとも相手が小林だったせいもたぶんにあると思うけれども……。
小林はあんまり毛深いほうじゃなかった。足なんかほとんど毛がなくてすべすべしていたし、腋毛もまあまあぐらいにしか生えていなかった。
「あっ、そこは……。」
『そこ』というのは、どうやら僕が吸っている乳首のことらしかった。舌でなめていると、どんどん堅くなって、ポッチリした感じになってきた。小林が感じているらしいのが面白くて、僕は、つい、歯を立ててしまった。
「あっ……。」
小林は顔をしかめてのけぞったりなんかしていたけど、どうも、痛かっただけじゃないみたいだ。小林の乳首を充分にもてあそんでから、僕はその柔らかいなめらかな体の線に沿って、自分の舌でへそのほうへ降りていくことにした。ブリーフが邪魔になったので、僕はゴムに指をかけて、少しずつそれを脱がせていったけど、小林は尻をちょっと浮かして協力してくれていた。でも、ゴム以外にもひっかかっているものがあるらしくって、小林のブリーフは脱がせにくかった。僕の舌にざらざらした毛が感じられるようになると、小林のブリーフから無理に下に押し向けられていたものが、ぶるん、と飛び出してきた。
「へえ、小林のって、意外と大きいんだなあ。」
わりと冷静にそんなことを考えながら、僕はそれを口にほおばったのだ。やたらと堅くて、それでいてなんとなく弾力性があって、僕は舌で全体をなめ回しながら、その感触を楽しんでいた。
「先輩……。」
小林は僕の頭を手で押したり、腰をひねったりして逃げようとするんだけど、僕が両手で腰を抱えてしまったものだからどうしようもなかった。小林の下腹部は、僕の舌やら歯なんかに好きなようにされることになってしまったのだ。
「先輩、出るよ……。」
小林がいったときも、へえ、こんな感じで出て来るんだなあ、なんて思いながら、僕は小林の射精を楽しんでいた。
しばらくの間小林のを口に含んだままでいたけど、だんだん柔らかくなってきたので、ティッシュペーパーで拭いてやった。
「恥ずかしいよ……。」
そう言って小林は、僕の拭いてやったものを手で隠して、僕の胸に顔を押しつけてきた。
「先輩、僕のこと好きですか?」
小林は、僕に抱かれたままで言った。
「う、うん。」
と僕は答えたんだけど、行き着くところまで行ってしまって、小林に対する肉体的な興味が薄れてゆくのは否定できなかった。僕は、小林の髪を撫でながら、
「こんなことも、いつまで続くかなあ……。」
なんてぼんやり考えていたのだ。