Dreaming Interlude(僕の悪友との電話)

火曜日, 4月 29, 1997

受話器の向こうの声が、ちょっと皮肉っぽく響く。
「最近、つきあってるんだって?」
あいつにそう尋ねられて、僕は、ちょっと迷ったけれども、
「うん……。」
一応素直に肯定した。
「僕なんか、ちょっと優しくされると、すぐ惚れちゃうんだよなあ。」
電話だと、相手の顔が見えなくて安心してしまうのか、結局正直に白状してしまう。すると、奴は、
「でもさ、優しくされたらすぐ惚れちゃうんなら、俺にだって惚れていいわけだろ?」
とんでもないことを言う。どうして僕がおまえに惚れなきゃいけないんだよ。
「だって、俺なんか、いつも、こんなに優しくしてやってるんだぞ。」
「それとこれとは別だよ。」
そんなことわかってるくせに。
「結局おまえは、自分が一番かわいいんだよな。」
どきっ。
「どういう意味だよ。」
「いいよなあ、惚れる相手がいて。」
「でも、まだ、どうなるかわからないよ。」
「だって、また会うんだろ?」
「そりゃあそうだけど。」
奴はちょっとため息をついて、
「俺なんか、最近、食欲がなくて……。」
なんて言う。
「?」
この前は、食い過ぎで最近太ってきたとか言ってなかったか?
「あ、本当の食い物の話じゃないよ。」
奴は、僕の沈黙に気づいて、あわてて弁解する。
「じゃあ、何の話だよ。」
と質問しながらも、僕は奴の答えそうなことはわかっていた。
「だから、最近、かわいい子を見ても、あんまり食おうとか思わなくなっちゃって……。」
それは、世間の平和のためには大変望ましいことじゃないかと思うけど。
「適当に食い散らかしてもいいんだけど、後がたいへんだから。」
その言い方はちょっとすごいんじゃないか。
「見てるだけで、満足できるんだから、俺も年食ったのかなあ。」
本当に見てるだけで満足するのかどうか、怪しい限りなんだけど、一応は本人の言っていることを信じることにする。
「食い散らかせるんなら、そうすればいいじゃないか。」
僕は、何となく奴がうらやましくて、ちょっと冷たい言い方をしてしまう。もちろん、うらやましいのは、『食い散らかせる』ことじゃないけど。