―けど、俺が気になってるのは、きのうのことじゃないんだぞ。
―……あふ。
―こら、あくびで誤魔化すんじゃない。……おまえ、最近、ぼけっとして、何を考えてるんだよ。
―僕だって多感な少年だから、たまには考えごとぐらいしたっていいだろ？
―多感ってのは、まだ許すとしても、少年ってのは、ちょっと、相当無理があるんじゃないか？
―……兄貴、絶対、僕に悪意持ってるよ！
―だから、考え事するのはいいけど、俺の顔見て憂うつそうにするのは、どういうことか、って聞いてるんだ。
―憂うつそうって……？
―この世の終わりみたいな顔してるぞ。
―ひょっとして、俺以外に好きな男ができたのかと思ってさ。
―あ、それいいなあ……。そういう台詞、大好きだよ、僕。
―こら、冗談言ってる場合じゃないんだぞ。真面目に答えろ。
―僕、兄貴の腕枕なしじゃ眠れないよ。
―この気障なガキが。
―嫌だなあ、オジサンは。素直じゃないんだから。
―なんだと？
―あ……。
―かわいいよ。
―うん……？
―本当だぞ。
―いいよ、そんなこと言わなくても。自分でわかってるから。
―生意気なガキめ。
兄貴の唾液、激しく動き回る舌の潤滑剤としての唾液。兄貴の汗、じっとりと僕と兄貴の体の接着剤としての汗。兄貴の……、確かな快感の存在としての……。