―寝苦しくないか?
―うん、だいじょうぶ……。
―もっと俺に寄りかかっていいんだぞ。
―ありがとう。
―ほら、もっと頭をこっちに寄せろよ。遠慮なんかするなよ。
―でも、重いだろ?
―おまえの頭ぐらい、なんでもないさ。……ほら。
―……どうせなら、もうちょっと下にキスしてくれればいいのに。
―いやらしいなあ、そういうことを言うなよ。
―何がいやらしいんだよ、兄貴の考えすぎだよ。
―……これでいいんだろ?
―うん。でも……、煙草の味がする。
―嫌いか?
―兄貴の味だからね、我慢するよ。
―我慢してるわりには……、こっちのほうが元気になってるぞ。
―あ……、だって、それとこれとは別だよ。
―そうかなあ。
―そうだよ。さっきから、兄貴がいろんなとこくすぐって、いたずらするから……。
―勃っちゃった、ってわけか?
―うん……。
―自分の都合が悪くなると、すぐ俺のせいにするんだからなあ。
―僕は、本当は純情だから……。
―きっと、純情のほうは迷惑がってるぞ。もうこんなにべとべとになってるくせに、たいした純情だなあ。
―くすぐったいよ。
―よし、俺のキスが煙草の味だったら、おまえのこいつはどんな味かな……?
―あ……。
―……。
―どんな味がする?
―ちょっと塩辛くて、なかなかいいよ。
―じゃあ、僕も……。
―どうだ?
―大きすぎて、味なんかわからないよ。
―すぐ、ぶりっこするんだから……。
―……。
―……いいか?
―……僕も。
―うっ……。
兄貴の寝息、僕の子守唄がわりの寝息。兄貴の寝顔、兄貴自身は知らないあどけない表情の寝顔。兄貴の夢、僕にはどうすることもできない夢。