Love Letter

水曜日, 3月 31, 1982

―ただいま。
―お帰り、えらく早かったけど、ちゃんと仕事してきた?
―当たり前だろ。おまえ独りにしとくと、ろくなことないと思って、大急ぎで飛んで帰ってきたんだ。
―そんなに急ぐことなかったのに……。
―そんなこといっていいのか?おまえがたいくつしてため息ついてるのが、ドアの外まで聞こえてきてたぞ。
―え?本当?
―ほら、やっぱり退屈してたんだろ?おまえも素直じゃないんだから……。
―……上着ぐらい脱いでからにすればいいのに。
―おいしかった、って言ってごらん。
―だって、煙草の味しかしないもん……。
―……まったく、おまえにはかなわないなあ。
―コーヒーでもいれようか?
―ありがとう。
―インスタントしかなくて悪いけど……。
―悪かったな、インスタントしか置いてなくて。ドリップなんか、手間がかかるばっかりだろ?
―でも、インスタントよりは、ましな味がすると思うけどなあ……。
―うるさいやつだなあ。どうせおまえは、砂糖を山盛りに入れて飲むんだから、たいして変わりないだろ?
―……。
―今度はどうだった?
―おいしかった、コーヒーの味が……。
―こいつ。素直に言うまで離してやらないぞ。
―あ、駄目……。
―体のほうは、こんなに素直なのに、おまえはすぐ強がるんだから。
―嫌だなあ、そんな露骨な言い方して……。
―おまえも、たまにはよがってみろよ。『いい』とか、なんとか……。
―『いい』……?
―俺の声まで真似しなくていいんだ。
―ああ、いい、うえお、なあんて……。
―こいつ、ふざけやがって!……よし、もうこうなったら強姦だ。
―痛っ……。
―少しぐらい痛いのは、我慢しろ。
―服が破れるよ。
―そのほうが強姦らしくていいじゃないか。
―いやだ、やめて……。
―やめない。おまえが悪いんだからな、このかわいい唇が……。

兄貴の腕、僕に腕枕をしてくれる腕。兄貴の腕、僕を押さえつけて身動きできないようにしてしまう逞しい腕。兄貴の腕、僕を抱き締めてくれる腕。