―ふう……。
―『ベッドで煙草を吸わないで』っていう歌があったよね。
―うん?
―もし、僕がそう言ったら、どうする?
―おまえは、そんなこと言えないだろ?
―どうして?
―……こういうのが好きだから。
―うっ……。
―煙草の味のするキスが好きだから。
―ひどいなあ。
―違うか?
―……ふん。
―それより……。
―何?
―ああ、あった、あった。……ほら、これ。
―何これ?
―見ればわかるだろ?ラブレターだよ。
―僕に?
―そう。それをおまえに渡したかったから、大急ぎで会社から帰ってきたんだ。
―仕事しないで、こんなもの書いてたの?
―いいから読めよ。
―『おまえのしかめっ面、おまえのすねた顔、おまえのわがまま』って、なんだか、これ、僕の悪口ばっかりじゃない。
―いちいち声に出して読むなよ。
―『……おまえの笑顔、おまえのすまし顔、それが全部おまえだから、俺は……、好き』って、いやだなあ、こんなキザなこと書いて……。
―……。
―そりゃ、僕ってガキだよ。わがままで……。
―まったく手がつけられないな。
―でも、僕……。
―どうした?
―僕、兄貴以外には、こんなふうに甘えられる人なんていないんだ。
―わかってるさ、そんなことぐらい。
―ありがとう、ラブレター。
―ああ。だから、明日はちゃんと朝飯の食える時間に起きてくれよ。
―はあい。
Love Letter
水曜日, 3月 31, 1982