実際問題として、寝付かれない時なんかに、僕は、どうして男と寝なきゃならないのか、なんて真剣に悩んでしまうこともあるのだ。非常に馬鹿馬鹿しいと、我ながら思うけど……。まあ、そういう時ってのは、だいたいにおいて、その、なんというか、あんまり欲しくない状態にあることが多いわけで、
「男と寝るのと、女と寝るのとじゃ、どこがどれだけ違うんだろう?」
なんて、恐ろしくも形而上学的というか、およそくだらないことに悩んでしまったりするのだ。でも、残念ながら、そういう状態ってのは長続きしないわけで、少なくとも一ヶ月に一回ぐらいは、どうしようもなく欲しい時があってしまったりする。そんなときは、淫乱旅館なるところでとりあえずやっちゃう、のが手っ取り早くていいわけなんだけど、そういういかがわしい場所から出てきた後の、思わずため息をついちゃうような空虚しさが耐えられなくて、だいたいは、自分でやっちゃうのだ。まあ、溜まっちゃったのを出しちゃえば、快感に対する欲求ってのは満足されるんだけど、そうすると、人肌が恋しい、みたいな感じだけが残っちゃって、かえって欲しくなっちゃったりする。
けれども、こういうくだらないことを、ごちゃごちゃ言ってられるのは、自分の部屋かなんかに独りでいるからで、いわば、机上の空論なのだ。従って、隣に敷いた布団に、野郎が、しかも、少なからずあこがれている良ちゃんなんかが、下着姿で寝てる場合、発情期であるか否かなんてこととはまったく関係なく、なんというか、露骨な言い方をすれば、勃っちゃうわけなのだ。
「……。」
良ちゃんが、ごそっと寝返りをうつ雰囲気があって、思わず期待してしまったりなんかするんだけど、相変わらず、良ちゃんは平和に眠っているみたいで、純情な僕は、ため息をついて、カチンカチンに勃っちゃって、ビキニブリーフの上端からはみ出しちゃったやつを、ちょっと撫でてみる。
「う……ん。」
良ちゃんがまた寝返りをうって、僕は、また、肩すかしを食わされちゃうのだ。
だいたいにおいて、自分の家に酔っぱらった純情少年を引っ張り込んで、並べて敷いた布団に寝かせる、なんていうのは、本人がどれだけ弁解したって、下心がない、ってことはあり得ないと思うし、もし、本当に下心がないとしたら、はっきり言って詐欺だと思うのだ。だいたい、純情な美少年が予感に胸をふるわせながら、ついでにあそこも堅くして、待っているっていうのに、全然手を出そうともしないなんて、ひどい!……もっとも、美少年、っていうあたりは、いくらか疑問の余地もあるとは思うけど……。
「……。」
そうしたら、良ちゃんが、もう一回寝返りをうって、僕のかぶってる毛布の腰のあたりが持ち上がる気配がした。
「……。」
僕は、とたんに、のどがからからになっちゃって、生つばを飲み込もうとするんだけど、なんだか、良ちゃんの手が伸びてくるのを待ってたみたいで嫌だから、そうもいかなくって、純情な少年は大変なのだ。
まあ、そうは言っても、良ちゃんの指が僕の太腿に触った時、体で、ビクン、と反応しちゃったから、良ちゃんの手は勇気づけられたみたいで、早速、僕の腿の内側まで回り込んできて、いやらしいことをするのだ。まあ、僕にしたって、ブリーフからはみ出しちゃってる先端のところには、粘液がにじんでる雰囲気だから、もっといやらしい行為を期待してるわけなんだけど……。
「知くん……?」
良ちゃんなんか、ひどいから、黙って触ってくれればいいのに、わざわざ僕が起きてることを確かめようとするのだ。
「起きてる?」
堅くなっちゃったものの根元あたりを、すっと撫でながら、そんなことを尋ねられると、返事が思わずうわずっちゃったりする。
「う、うん……。」
こんなに堅くなっちゃってるんだから、ブリーフの上から根元を触っただけでも、僕が勃っちゃってる、ってことが、十分わかるはずなのに……。
どう考えたって、こういう場合、襲う立場にある良ちゃんが、襲われる立場の僕の布団にもぐり込んできてくれるべきだと思う。それなのに、
「起きてるんなら、こっちへ来いよ。」
なんて、純情少年を誘惑するのだ。僕は、そんなに淫乱じゃない、はずなんだけど、ここで断ると、良ちゃんに恥をかかせちゃうことになるから……。
「知くん……。」
僕は、ブリーフの上端から勃っちゃったものをはみ出させたまま、良ちゃんの体温の隣にもぐり込むことになる。少なくとも、良ちゃんは、
「いいかい?」
なんて尋ねるほどまでは野暮じゃなくて、キスに始まって、直接全身に、良ちゃんの体温を感じることになった。
「……。」
良ちゃんが僕の手首をつかんで握らせたものは、熱を持って、堅く充血していた。
良ちゃんは、普段は、すごく真面目そうでいわゆるサラリーマン然としてるんだけど、本当は淫乱で、非常にスケベなんだ、ということを発見してしまった。つまり、
「これはなんていう名前だ?」
とか、
「どうして欲しいのか、自分の口から言ってみろ。」
とか、
「いかせてください、と言え。」
とか、要するに、卑わいな言葉を僕に要求するのだ。いくら、そのものを握らされてたって、そんなことを自分の口から言うのは恥ずかしいから、
「嫌だよ……。」
かなんか言って誤魔化すわけなんだけど、そうしたら、良ちゃんは、
「これは、俺の大切な息子だろ?」
とか、もっと卑わいな表現を平気で使って、僕が握らされてるものに、ビクン、と力を込めてみせるのだ。いつもは、これっぽっちもわいせつな言葉なんか知らないような顔をしているくせに、いざとなると、すごいんだから、参っちゃうなあ。
それに、こういうわいせつごっこにも飽きてくると、僕をあお向けに寝かせて、僕の太腿のところに腰をおろして、僕のと、良ちゃんのと、カチンカチンのやつを二本まとめてこすっちゃうのだ。
「もっと、よがってみろ。」
なんて、先の敏感なところをぐりぐり撫でられちゃうと、思わず、声が出てしまう。両側からはさむようにして、ぐちゅぐちゅ、こすりながら、良ちゃんなんか、舌でもって、僕の乳首とか脇腹なんかを、いたずらするのだ。
「あ、そんなとこ……。」
変に感じちゃって、
「い、いきそう……。」
すぐ、下腹部のあたりが、むずむずなっちゃうのだ。
「いかせてください、って言ってみろ。」
良ちゃんなんか、意地の悪い手つきで、僕のを刺激しながら要求するのだ。
「い、いかせてください……。」
全身を突っ張って、快感に耐えたけど、生ぬるい液体が、びゅっと飛び出してしまった。良ちゃんなんか、僕の顔まで、ベトベトにしちゃったのだ。