人しれず

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人しれず、はひっそりとたたずんでいる喫茶店でした

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視線

木曜日, 6月 23rd, 2011

久しぶりの、風呂に行こうぜ、という召喚メールで、おつきあい。
とは言うものの、やっぱり、いい体をしてる人を見ると、ちょっとときめいてしまう。ましてや、それが、昔の男ににてたりすると、ガン見の域を通り越してしまってるかもしれない。
彼とはよく一緒に風呂に来て、自分が、彼以外の男に視線を投げかけていることを、よく冷やかされていたっけ。
熱い湯につかってほてった体を、露天風呂のベンチで冷ましながら、誰かの視線を待ち受ける。そんなことを繰り返しながら、のんびりした時間を過ごすと、お疲れ気味で頑なになった心も少しは柔軟さを取り戻していく感じがする。
そんなこんなで、ふと、我に返って、現実からの呼び声を聞く。
「そろそろ帰ろう。」
露天風呂ですっかりリラックスしているご様子の友達を見つけて、そう声をかけようとして、ふと気づく。
彼と来ているときに、自分からそんなことを言ったことなんかなかったことに。
風呂にも飽きてきた自分が、彼の視線をとらえると、彼は、ちょっと微笑いながら、
「もう帰るか?」
必ず、そう言ってくれたことに。
今さら、彼との間に、明日があったりしないってことは、よくわかってるけど、だからこそ、自分が失くしてしまったものの大きさを思い知らされる気分だった。